新日本酒紀行 地域を醸すもの 日本酒

新日本酒紀行 地域を醸すもの・上喜元 NO.317


新日本酒紀行 地域を醸すもの

「上喜元」JOKIGEN

山形県酒田市
『30品種の米を使い分け、
多品種少量仕込みで技を伝える酒造り』

 酒の字を冠する山形県酒田市は日本有数の穀倉地帯で、最上川が日本海と出合う港町。
その市中に唯一残る酒蔵が酒田酒造だ。
1947年に飽海(あくみ)地域の5蔵が合併して創業。
5代目で杜氏の佐藤正一さんは46年生まれ。合併蔵の出身で東京農業大学卒業後、71年に蔵人として入社。腕を買われて74年に杜氏、98年に社長に就任した。
今も醸造の最前線に立ち、松山酒造と二つの蔵の経営を担う。

 引き継いだ頃は、大手に桶売りしていたが、時代の変遷とともに高品質な酒造りへ舵を切り、吟醸酒をいち早く手掛けた。
好奇心旺盛で醸造道具を独自に工夫、全国の優良な酒米を試し、圧倒的な多品種少量仕込みを行う。米は30品種を使い分け、全て10キログラムずつ丁寧に手洗い。
品種と酵母の相性を見極め、多彩な精米歩合と酵母の組み合わせで飲み手を魅了する。全国新酒鑑評会では、9回連続金賞受賞という実力派だ。

 若手にも挑戦を促し、楽しい新商品も続々誕生。「今が酒造り史上最高においしい」と佐藤さん。また、宿舎も用意し、県内外の若手に技術指導を行う。

「自社だけが良いという考え方では、日本酒全体が他の酒から後れを取る」。ここで学んだ富山県の林酒造場や三重県の早川酒造は、優秀な結果を出して期待の新星に。

 「酒蔵は大儲けこそできないが、子供が継ぎたくなる蔵になるべきだ。文化伝承、技術継承のために存在する」と説く。「来年の酒は、今年よりうまくなる!」と笑顔の佐藤さん。進化はやむことがない。

↑上喜元 純米 出羽の里

酒田酒造・山形県酒田市日吉2-3-25
https://www.instagram.com/sake_jokigen/
●代表銘柄:上喜元 純米吟醸 完全発酵超辛、同 特別純米 からくち、同 純米大吟醸 雪女神
●杜氏:佐藤正一
●主要な米の品種:出羽燦々、出羽の里、山田錦、五百万石

新日本酒紀行「上喜元」
蔵の中 Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「上喜元」
5代目で杜氏の佐藤正一さん。1946年生まれ。
新日本酒紀行「上喜元」
仕込み水は鳥海山系伏流水で特別な浄水器を通して使う。
Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「上喜元」
釜場。和釜を修復して使い続ける。Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「上喜元」
釜場。和釜の底には傷を修復したあとがある。迫力満点!
Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「上喜元」
酒蔵外観 Photo by Yohko Yamamoto