週刊ダイヤモンド23年10月7日・14日合併特大号
連載「新日本酒紀行 地域を醸すもの」では、フランス・パリで、現地の米と水と酵母でSAKEを醸造する、WAKAZEさんをご紹介。初代杜氏の今井翔也さんが、2023年7月4日に発酵デパートメントで小倉ヒラクさんと対談し、そのときの話が興味深いことばかり!フランスでSAKEを醸すということに展望が開けた瞬間でした。現地スタッフに、どうやってデリケートな日本酒の発酵を伝えていくかなど、米は? 水は? 酵母は?盛り沢山に話を伺うことができました。アメリカ西海岸で新しい展開も始まるWAKAZEさん、ますます目が離せません。
小倉ヒラクさん
この日のラインナップ
新日本酒紀行 地域を醸すもの・ WAKAZE NO.316
フランス・パリ
(本文より)
『日本酒を世界酒に!
仏パリから米西海岸へ羽ばたくスタートアップ酒蔵』
WAKAZEとは「世界に和の風を吹かせる」意の社名。
代表の稲川琢磨さんは、2018年に「その他の醸造酒」免許を取得し、東京で三軒茶屋醸造所を創立。15m2に200リットルタンクを4本立て、どぶろくやボタニカル酒など斬新な酒を発売した。
翌年、仏パリ近郊で450m2に2500リットルタンクを12本揃えたKURA GRAND PARISを開設。
パリ市内に、発酵料理とペアリングを楽しむ店も開く。
酒質設計を担うのは今井翔也さん。酒蔵で生まれ、「日本酒を世界酒に」を合言葉に稲川さんと共に創業から走り続ける。
土地の米で醸すのが信条で、フランスでは塩で有名なカマルグ産を精米90%で使う。
仕込み水はミネラルが多い硬水で、清酒酵母は発酵が活発になり、超辛口酒に仕上がる。
しかし、「フランス人はそんな味は好まない」とワイン酵母に変更。発酵が落ち着き、ミネラル感のある柑橘のような酸味と甘み、アルコール度13%の独自の酒が誕生した。
苦労は多いが、中でも繊細な醸造技術を翻訳するのに困難を極めた。
日本酒を世界酒にするには造り手を増やすこと。伝え方の工夫も必要と、「感覚の共有」を重視する酒造りを徹底。
「硬水醸造法を確立し、世界中どこでも造れることを証明する」と今井さん。
今年1月、WAKAZEの革新的な酒造りに共鳴する宝ホールディングス、ジャフコ グループなどの事業会社、ベンチャーキャピタル、個人投資家からシリーズBの資金調達を行った。
今秋、米西海岸で新たな挑戦が幕を開ける。
WAKAZE代表取締役CEOの稲川琢磨さん (c)@sadiksansvoltaire
↑ 「WAKAZE THE CLASSIC」
●代表銘柄:WAKAZE T H E C L A S S I C、
T H I E R R Y M A R X &WAKAZE CAPSULE COLLECTION
●酒質設計:今井翔也
●主要な米の品種:カマルグ産米
代表作の「WAKAZE THE CLASSIC」はフランスと日本の生産拠点から世界へ (c)@sadiksansvoltaire
初代杜氏で取締役CTOの今井翔也さん (c)@sadiksansvoltaire
パリ醸造所の麹室 (c)@sadiksansvoltaire
醸造室 (c)@sadiksansvoltaire
瓶詰めライン (c)@sadiksansvoltaire
「ゆず・スパークリングSAKE」 (c)@sadiksansvoltaire
取材/日本酒と食のジャーナリスト 山本洋子