週刊ダイヤモンド23年9月30日号の『新日本酒紀行 地域を醸すもの』は、栃木県小山市・西堀酒造の「ILLUMINA」を紹介しています。
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↑国の有形文化財である長屋門 Photo by Yohko Yamamoto
「透明(クリア)タンク醸造からLED光照射発酵へ、前代未聞の進化を続ける酒造り」
世界初、日本酒の醪(もろみ)発酵の可視化に成功したのが、栃木県小山市の西堀酒造5代目の西堀和男さん。1872年創業、地元消費が9割という地酒蔵だ。
歴史的に酒造りの容器は、甕(かめ)から木桶、金属桶と変遷したが、全て不透明な素材のため、発酵の状況は液面を見て、成分を分析して調べる。
ある日、和男さんは水族館でクラゲが身を任せて漂う姿を見て、酒の醸造と重なり透明な醪タンクが閃いた。
だが醸造機器メーカー10社に製造を断られる。諦め切れずに探し回り「保証なし」の条件で、水槽メーカーが受けてくれた。価格は通常のタンクの約5倍だ。
実際に酒造りを行うと、予想以上に醪は激しく対流していた。
「対流の状況が確認できるので、必要なときだけ櫂(かい)入れを。自然に任せることで酒が洗練されました」と6代目の哲也さん。
さらに、酒造りは進化を続ける。ヒントは水耕栽培だ。
LED光照射で育つ野菜は、青色光でポリフェノールが増えるなど、光の波長で栄養成分が変わる。光は醪発酵にも生かせるのではと、LED光で照らした。
「赤色光は酵母の発酵が促進され辛口に。青色光は抑制され甘めに。光の色調で風味が変わります」。「ILLUMINA(イルミナ)」と名付けた。
最近、新たにスピリッツやウイスキーの製造を開始。減圧蒸留や清酒酵母発酵など、日本の酒造りの技術を洋酒の醸造にも取り入れる。
「そうでなければ、日本酒蔵が造る意味がありません」と哲也さんは笑顔。世界唯一の醸造と蒸留。日本酒をベースに革新を続ける。
↑「ILLUMINA 赤光 RED LIGHT」
●代表銘柄:門外不出、CLEARBREW、ILLUMINA、西堀、愛米魅 I MY ME金の純米酒
●醸造責任者:小池 博
●主要な米の品種:あさひの夢、夢ささら、とちぎ酒14
有形文化財の長屋門と仕込み蔵 Photo by Yohko Yamamoto
有形文化財の煙突。煙突の割れは関東大震災の傷痕 Photo by Yohko Yamamoto
歴史ある仕込み蔵 Photo by Yohko Yamamoto
そこに最新鋭の透明タンクが! Photo by Yohko Yamamoto
透明タンクでもろみを発酵。 Photo by Nishiborisyuzo
赤色LED光を照射! Photo by Nishiborisyuzo
光で醸す「ILLUMINA」3色。Photo by Yohko Yamamoto
元精米所を改装したウイスキー蒸留所。減圧蒸留でポットはステンレス製
Photo by Yohko Yamamoto
元精米所を改装したウイスキー蒸留所。減圧蒸留でポットはステンレス製
Photo by Yohko Yamamoto
ウイスキーの酵母は清酒酵母 Photo by Yohko Yamamoto
西堀哲也さん Photo by Yohko Yamamoto
蔵併設のショップ。テイスティングもできる。 Photo by Yohko Yamamoto
蔵併設の店内は昔の酒造道具をディスプレイに活用 Photo by Yohko Yamamoto
蔵併設ショップの冷蔵庫 Photo by Yohko Yamamoto
全国の優良な酒米で醸すブランド「西堀」。中でも人気が高い「愛山」
Photo by Yohko Yamamoto
古代米を使う「愛米魅」は複雑なおいしさ。Photo by Nishiborisyuzo
Photo by Nishiborisyuzo 定番酒「門外不出」の吟醸酒の酒粕からつくる「粕取り焼酎 門外不出」。の見応えあって大人気!西堀酒造は、清酒、焼酎、リキュールとアイテムが多く、楽しめる。酒蔵見学も実施。詳しくはHPを参照。https://nishiborisyuzo.com/
酒食ジャーナリスト 山本洋子
※週刊ダイヤモンド2023年9月30日号より転載
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