新日本酒紀行 地域を醸すもの 日本酒

新日本酒紀行 地域を醸すもの・ササノメグリ 碧笹 NO.313

新日本酒紀行 地域を醸すもの

神奈川県秦野市 金井酒造店

「ササノメグリ 碧笹」

新日本酒紀行「ササノメグリ 碧笹」
蔵は「秦野名水うるおいスポット」に認定され、仕込み水を提供する Photo by Yohko Yamamoto

『秦野唯一の酒蔵が新たな息吹を吹き込んで挑む、爽快な酒』

 丹沢山地と丘陵に囲まれた秦野盆地は神奈川県唯一の盆地で、良質な地下水に恵まれ、「秦野盆地湧水群」は名水百選にも選出された。その秦野市で唯一残った酒蔵が金井酒造店だ。

 女性蔵元の佐野リキさんが、1868(明治元)年に創業したが、業績悪化と後継者難で、6代目の博之さんは生き残りを懸け、2021年にM&Aの道を選ぶ。
中小企業の再生を手掛けるくじらキャピタルが再建に取り組んだ後、23年1月、ジェントルゆうすけさんが代表を務める地域活性化事業を行うローカルエージェントカンパニー、ココハダLABへ譲渡された。

 ゆうすけさんは「秦野を元気に」を合言葉に事業を展開。秦野を発信するメディアや、秦野産の茶葉を使ったビールの商品化、地元の素材を生かすレストランなどを手掛けるが、酒蔵の運営は初めて。大きな賭けだったが、地域に開かれた酒蔵を目指すと決心。

  ブランドの再構築に当たり、「未来を醸す酒」を視野に入れた。
そして誕生したのが「ササノメグリ 碧笹」だ。柑橘系の酸味があり、11%の低アルコールでするすると飲め、洋食にも合う。

 新しい味を可能にしたのは、温度調節できる小型タンクの導入だ。杜氏の米山和利さんは新しい麹や酵母に果敢に挑戦し、さらに地元の果実を漬けた日本酒ベースの酒も発売。秦野産の米で酒を醸したいと農家と酒米の契約栽培を始めた。
農家との連携を強固に、経営改善を進める開かれた酒蔵モデルが始動。秦野に新たな息吹を吹き込む。

新日本酒紀行「ササノメグリ 碧笹」
↑「ササノメグリ 碧笹」
金井酒造店・神奈川県秦野市堀山下182-1
●代表銘柄:白笹鼓 純米大吟醸、白笹鼓 特別純米、白笹鼓 ウメザケ、ササノシラベ 銀笹
●杜氏:米山和利
●主要な米の品種:五百万石、山田錦、若水
新日本酒紀行「ササノメグリ 碧笹」
秦野の農家と蔵人とファンによる酒米作り Photo by kaneishuzoten
新日本酒紀行「ササノメグリ 碧笹」
蒸し米 Photo by kaneishuzoten
新日本酒紀行「ササノメグリ 碧笹」
放冷 Photo by kaneishuzoten
新日本酒紀行「ササノメグリ 碧笹」
麹造り Photo by kaneishuzoten
新日本酒紀行「ササノメグリ 碧笹」
仕込み蔵 Photo by Yohko Yamamoto