新日本酒紀行 地域を醸すもの 日本酒

新日本酒紀行 地域を醸すもの・旭日 NO.305

新日本酒紀行「旭日」
↑歴史ある藤居本家の東蔵 Photo by Yohko Yamamoto

週刊ダイヤモンド23年7月1日号

新日本酒紀行 地域を醸すもの「旭日」KYOKUJITSU

『近江の地酒と食文化を伝える!
総ケヤキ造りの酒蔵』

(本文)

 滋賀県の琵琶湖は面積約670平方キロメートル、貯水量275億トンと日本最大で最古の淡水湖。
   湖東側の愛荘町は近江盆地の中心部で、鈴鹿山脈の豊かな水に恵まれた穀倉地帯だ。

   昔からの交通の要衝であるこの地で、1831年に創業した藤居本家

 7代目の藤居鐵也さんは、全量滋賀県産の酒米で酒を醸し、地酒に特化する。日本酒の文化価値を伝えたいと酒蔵見学を行い、かつて酒造りをした、総ケヤキ造りで国の登録有形文化財の東蔵で歴史や醸造を語る。

 蔵の最深部の貯蔵庫は、4本の丸柱が大きな蔵を支えていて圧巻だ。


 2022年には蔵の一画を改装し、近江の食文化を味わう「かくれ蔵 藤居」を新設。

 また、年に数回、蔵開きを開催し、そのときに提案するのが郷土の酒肴だ。琵琶湖で取れるスジエビを大豆と甘辛く煮たえび豆や、丁子麩の辛子あえなど、地の米で醸したうま味ある酒がピタリと合う。

 現在、酒造りは少し離れた宮蔵で行い、能登杜氏の外村一さんが指揮を執る。伝統製法の生酛造りには定評がある。

 蔵の顔である店も総ケヤキ造りで、樹齢700年の丸柱が伸びる2階には200畳の大広間があり、建築関係の見学者も多い。

 ここを設計したのは、2011年に100歳で天寿を全うした鐵也さんの母、先代の静子さんだ。大学で医学を専攻、独学で建築を学んで木材選びから関わった。

「何千年の歴史が育んだ酒造技術と、四季が巡ってできる米を丹精込めて醸すのが日本酒」と鐵也さん。代表銘柄の「旭日」をはじめ、日本の酒の文化が凝縮する。

新日本酒紀行「旭日」
↑「旭日 レトロラベル 生酛 純米酒」

藤居本家・滋賀県愛知郡愛荘町長野793
●代表銘柄:旭日、琵琶の舞、杜氏の舞
●杜氏:外村 一
●主要な米の品種:玉栄、吟吹雪、山田錦、滋賀渡船6号、渡船2号
新日本酒紀行「旭日」
蔵の最深部の貯蔵庫は、4本の丸柱が大きな蔵を支える 
新日本酒紀行「旭日」
貯蔵庫の立派な丸柱 
新日本酒紀行「旭日」
大きな蔵を支える丸柱 
新日本酒紀行「旭日」
東蔵の内部。昔の道具があちらこちらに。
新日本酒紀行「旭日」
昔の看板 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「旭日」
仕込み水は鈴鹿山系愛知川の伏流水を使用。なめらかな軟水。 
新日本酒紀行「旭日」
蔵案内する7代目の藤居鐵也さん。 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「旭日」
原料米は滋賀県産米を使用する。
新日本酒紀行「旭日」
滋賀県産の酒米、米を蒸す道具。
新日本酒紀行「旭日」
蔵の中には、昔の道具類が。
新日本酒紀行「旭日」
新設した東蔵内の食事処 https://www.fujiihonke.jp/kakuregura/index.html 
新日本酒紀行「旭日」
東蔵の外観 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「旭日」
店舗は総ケヤキ造り。大広間では音楽会も時々開催される。
新日本酒紀行「旭日」
店の外観 
新日本酒紀行「旭日」
蔵開きで登場するえび豆 
新日本酒紀行「旭日」
蔵開きで登場する丁子麩の辛子あえ 
新日本酒紀行「旭日」
酒造りを行う宮蔵は、周囲を田んぼに囲まれる。 
新日本酒紀行「旭日」

滋賀渡船六号で醸した旭日 滋賀渡船六号 特別純米原酒」 

新日本酒紀行「旭日」
「杜氏の舞 純米大吟醸」 
新日本酒紀行「旭日」
「杜氏の舞 純米大吟醸」裏面のラベル 
新日本酒紀行「旭日」
「旭日 レトロラベル」の裏面のラベル 
新日本酒紀行「旭日」
人気商品の「大吟醸酒粕」
 (全てのPhoto by Y.Y.)

●酒蔵見学について http://www.fujiihonke.jp/kengaku.html

(酒食ジャーナリスト 山本洋子)

週刊ダイヤモンド2023年7月1日号より転載

https://www.diamond.co.jp/magazine/20241070123.html