旭鳳酒造は創業1865年の老舗。
7代目の濱村洋平さん。Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行 地域を醸すもの「旭鳳」
広島県広島市安佐北区可部
『地の米と地の酵母で、
父にささげる可部の地酒に挑む』
(本文)
旭鳳酒造7代目を濱村洋平さんが継いだのは2015年、弱冠26歳の夏だった。
初めて酒を手掛けたのはその秋だ。「父親の死に顔を見て、ささげる酒を造ろう」と、64歳で急逝した父泰司さんへの敬意を込め、杜氏に教わりながら醸した。
米は広島の酒米八反錦、酵母はKBを選択。KBは蔵のある地名「可部(かべ)」から命名された、泰司さんが開発に関わった酵母である。
完成した酒は、父と自分の名から1字ずつ取り「泰平」と名付けた。
洋平さんは以前から、杜氏が代わると、酒の味が変わるのが気になっていた。
16年に杜氏が退社したのを機に、自ら杜氏となり、旭鳳の味をつくると決心。
不安が襲う背中をグッと押したのが、父の酒造の友人たちだ。
中でも原本店の原純さんは「おまえが造れ。大丈夫、酒にはなるけ!」と励まし、指導してくれた。
19年、無我夢中で醸した純米大吟醸が、フランスで開催された日本酒鑑評会で金賞を受賞。翌年も連続受賞し、21年には「泰平」が金賞に輝く。
使う米は全て県産だが、純米酒の「大林千年」は自ら米栽培に参加。
田んぼのある大林地区は高齢化と過疎化が進む中山間地域で、14年の集中豪雨で甚大な被害に遭った。
「千年先も豊かな集落を目指そう」と他地域から若者が集まって被災田を復田。4年目に酒が仕込める量が取れ、醸した酒は町内で完売した。
重責を果たす中、品質向上に励み、KB酵母のもろみから新たな酵母を分離培養し、この地でしかできない酒造りに挑む。
「旭鳳 純米吟醸 泰平 TAIHEI」
●旭鳳酒造・広島県広島市安佐北区可部3-8-16
●代表銘柄:旭鳳 純米大吟醸八反錦、旭鳳 純米 中生新千本、旭鳳 大林千年
●杜氏:濱村洋平
●主要な米の品種:八反錦、千本錦、雄町、中生新千本
蔵の背後は高松山 Photo by Y.Y.
濱村洋平さんと母の郁子さん Photo by Y.Y.
原料処理室 Photo by Y.Y.
麹室 Photo by Y.Y.
完成した麹 Photo by Y.Y.
発酵中の酒母 Photo by Y.Y.
酒母 Photo by Y.Y.