（本文）
有機の里小川町でワインと純米酒を造る福島有造さん。
1968年群馬県に生まれ、北海道大学工学部を卒業後、銀行業に従事。
不動産事業の経営に関わった後、2010年から有機農業の道へ進んだ。
小川町で有機農業研修を受け、耕作放棄地を借り、パワーショベルで開墾。11年から無農薬でブドウ栽培を始めた。
並行し、町内の武蔵鶴酒造の蔵人になり、南部杜氏から酒の醸造を学ぶ。
「日本酒は並行複発酵。複雑な発酵工程は単発酵のワイン造りにも生きた」（有造さん）。
15年に杜氏に就任。有機農家が育てた無農薬栽培米イセヒカリを、醸造用乳酸無添加の生酛造りで純米酒「饗之光（あえのひかり）」を醸す。
22年に酒蔵が休造し、今期は滝澤酒造で醸造。うま味豊かで飲み応えある酒はワイン同様、長期熟成にも向く。
15年に武蔵ワイナリーを立ち上げ、17年に小川町がワイン特区で後押し、19年に建屋が完成した。
微生物に良い環境と地産地消を考え、埼玉県の木や石を使い、壁は漆喰と稲わらの土壁に。
太陽光発電を導入して電力を賄い、フォークリフトも電動だ。
商品のラベル紙は地元の小川和紙を使う。
町を盛り上げようと、駅前にレンタカー業、とんかつの「武蔵とんナリー」、古民家で直営店も運営する。
ブドウ畑は5ヘクタールに増え、ワイナリーで起業したい研修生も受け入れ指導を行う。
超多忙の有造さんだが、夢は「有機ワイナリーを増やし、小川町含む比企地域を有機ワインの里に！」。
百年後も必要とされる存在を目指す。
↑「饗之光 純米生酛造り 無濾過原酒」
●武蔵ワイナリー・埼玉県比企郡小川町高谷104-1
●代表銘柄：饗之光 純米大吟醸 生酛造り 無濾過生原酒、同 槽汲み、同活性にごり原酒、同 袋吊り
●杜氏：福島有造 ●主要な米の品種：イセヒカリ
武蔵ワイナリーは売店も併設し、地元の野菜や加工食品も並ぶ。Photo by Y.Y.
福島有造さんと妻の陽子さんと息子さん。 Photo by Y.Y.
小公子の圃場 Photo:Musashiwinery
小公子。虫が出たら手で捕獲する。 Photo:Musashiwinery
ワイン樽は国産のミズナラや杉、ヒノキ材も使用。 Photo by Y.Y.
有機農家の稲わらと漆喰で仕上げた土壁。 Photo by Y.Y.
日本酒とワインは、有料試飲もOK Photo by Y.Y.
いろんな種類が揃って楽しい！ Photo by Y.Y.
地元食材を使ったおつまみもあり Photo by Y.Y.
外のテラス席で Photo by Y.Y.
「饗之光」あえのひかり Photo by Y.Y.
日本酒の原料は、地元で無農薬栽培されたイセヒカリ Photo:Musashiwinery
イセヒカリの圃場 Photo:Musashiwinery
麹室にて。「饗之光」の麹 Photo:Musashiwinery
「饗之光」の麹 Photo:Musashiwinery
「饗之光」のラベル Photo by Y.Y.
ワイナリーには麹室も。自家製麹で「小川青山在来味噌」を製造している。うまみがあり美味！
元養蚕伝習所の玉成舎2階にある直営店 Photo by Y.Y.
玉成舎2階の直営店。飲んで食べて買える。 Photo by Y.Y.
玉成舎2階の直営店の窓辺 Photo by Y.Y.
ワインも日本酒も、少量ずつ楽しめる。
◉2023年3月25日～26日「小川のワイン祭」を開催！
musashiwinery.com
（酒食ジャーナリスト 山本洋子）
※週刊ダイヤモンド2023年3月18日号より転載
