賀茂鶴酒造外観 Photo by Yohko Yamamoto
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大吟醸酒を全国に先駆けて商品化したのは、広島県の西条で1873年に創業した賀茂鶴酒造だ。
98年に日本初の動力精米機を導入し、米質や酒ごとの微調整で品質を向上。
原料米は広島県産のみと潔く、地の酒を追求する。
「品質も見た目も一つ上」を提案し、大吟醸に金箔を入れた「特製ゴールド賀茂鶴」は、1958年から続くロングセラー。2014年に来日した米国のオバマ大統領が、安倍晋三首相と東京・銀座のすし店で飲み脚光を浴びた。
創業蔵の1号蔵を見学室直売所に改装。麹室を再現し、木桶や醸造道具を展示し、酒造りが身近に体感できる。定番酒や高級酒も手軽な値段で試飲でき限定品も買える。
名物は杜氏による酒蔵案内で、四つの蔵の4杜氏が週替わりで、普段公開しない蔵の内部を案内するとあって大人気。
その4杜氏の中で最年少が、78年生まれの椋田茂さんだ。高校生のとき、伝統産業の日本酒が後継者不足と知り、18歳で入社。配属された2号蔵の先輩は55歳と親子ほども年が違った。
いちずに酒造りに励んで3年、21歳で仕込み長に。研さんを積み営業職も経験し、11年に2号蔵杜氏に就任した。
かつて協会5号酵母はこの2号蔵で分離された。現在この蔵は手作業による少量仕込みを行っている。