新日本酒紀行 地域を醸すもの「寺田本家」
千葉県香取郡神崎町
『蔵人と米と菌が一体になって響き合う、
うたって醸す自然酒』
(本文)
米の全てが、自家栽培を含め無農薬米のみの寺田本家。
千葉県香取で創業し、350年以上続く老舗蔵だ。
24代目の寺田優(まさる)さんが杜氏を担い、蔵付きの菌で原点回帰の自然酒を醸す。
自然酒造りは、1980年代に先代の啓佐(けいすけ)さんが自らの病と経営危機を通し、自然な発酵と調和の重要性を悟り、始めた。
伊勢神宮でひらめきを得た発芽玄米酒や、室町時代から続く菩提酛仕込み、精米歩合90%の生酛仕込みなど、他に類を見ない酒を醸す、全国の自然食品店から絶大な信頼を集める唯一無二の酒蔵だ。
寺田本家は女系が長く、ここ3代以上、娘婿が蔵元を継承。
優さんの妻の聡美さんは啓佐さんの次女で、自然食について学び、蔵の隣で発酵料理のカフェを開く。優さんは2003年に30歳で蔵入りし、その後、急逝した啓佐さんの遺志を継ぎ、昔の米の復活栽培や、酒造りに唄を取り入れるなど、自然酒造りに邁進。
「楽しい気持ちが菌に伝わるように。うたうたびに蔵人と米と菌が響き合う一体感を感じます」と優さん。
自然に委ねる米作りと酒造りは環境の影響を大きく受ける。
「どんな味の酒になるか分かりませんが、おいしいのは間違いないです!」。
自然な酒造りは業界外から注目され、米企業パタゴニアの食品事業からも声が掛かり国内外で販売も。
人気酒は、玄米を1割しか削らず、木桶で酛すりを行う無濾過の「香取90」だ。
酸味とコクが豊かで黄色みを帯び、燗酒にするとうまさがさえる。
響き合いの結晶が飲み手にも力強く響く。
蔵の圃場 春の田植え Photo by Teradahonke
夏の草取り Photo by Teradahonke
秋の稲穂と天日干し Photo by Teradahonke
酒蔵 Photo by Yohko Yamamoto
酒蔵の内部 Photo by Yohko Yamamoto
うたいながら行う酛すり Photo by Yohko Yamamoto
仕込み Photo by Teradahonke
寺田優さんと妻の聡美さん Photo by Yohko Yamamoto
カフェうふふの飲み比べセット Photo by Yohko Yamamoto
カフェうふふは不定期営業。営業日はこちらで確認を→ https://www.teradahonke.co.jp/ufufu
カフェ店内 Photo by Yohko Yamamoto
発酵ごはんセット Photo by Yohko Yamamoto
酒まんじゅう Photo by Yohko Yamamoto
酒まんじゅう Photo by Yohko Yamamoto
自家製の焼き菓子 Photo by Yohko Yamamoto
蔵の売店 Photo by Yohko Yamamoto
甘酒「うふふのモト」白米と玄米 Photo by Yohko Yamamoto
個性派の味わい「醍醐のしずく」 Photo by Yohko Yamamoto
自然酒 生酛 純米酒「五人娘」 Photo by Yohko Yamamoto
(酒食ジャーナリスト 山本洋子)