週刊ダイヤモンド2023年2月11日号
新日本酒紀行 地域を醸すもの
新潟県新発田市の菊水酒造さんのロングセラー!世界初の日本酒缶「菊水ふなぐち」を紹介しています。日本全国津々浦々、コンビニには”必ずある”という日本酒、その背景とは🌾
酒蔵全景 Photo by Kikusuisyuzo
『誕生50年!
(本文)
今でこそ日本酒の生原酒は珍しくないが、冷蔵物流や店に冷蔵庫がなかった半世紀前は皆無だった。
1972年11月に、鮮度を保持したうま味ある生原酒缶を、日本で初めて商品化したのは新潟県の菊水酒造だ。
実は大水害の艱難辛苦を経て生まれた。
昔、蔵は新発田市中倉の川沿いにあったが、66年の下越水害で堤防が決壊し、土石流に襲われた。不幸は翌年の羽越水害と続き、被害は甚大。当時の社長、4代目の髙澤英介さんは移転を決意し、大借金を負って近代的な醸造場を新造した。
酒の価格競争が激しさを増し、新しい土俵をと商品開発に励む中、蔵で搾りたての生原酒を飲んだ客が「こんなうまい酒は飲んだことない!発売を」と熱望。
生原酒は劣化しやすく、菌と紫外線と空気に弱い。試行錯誤を重ね、菌は医療用のフィルターで除去。紫外線対策には遮光性に優れたアルミ缶を選んだ。充塡方法も工夫し、3年かけ苦労の末に完成した。
5代目で息子の髙澤大介さんいわく「当初は鳴かず飛ばずでしたが、スキー場や温泉で試飲販売を繰り返して評判に。旅でも楽しめると口コミで広まりました」。
今までに3億本を出荷し、20カ国へ輸出する。米国の展示会で「缶で品質を保持できるの?」と聞かれた大介さんは「Yes we can(カン)!」と返し、大受け。
「お酒の楽しさ、面白さを発信したい」と大介さん。
「お酒の楽しさ、面白さを発信したい」と大介さん。
大量に醸す技術を磨く一方で、伝統醸造を継承する蔵や復活米の圃場も手掛け、次の50年に向かって歩を進める。
↑『菊水ふなぐち』
●菊水酒造・新潟県新発田市島潟750
●代表銘柄:菊水の辛口、菊水の純米酒、無冠帝、蔵光、酒米菊水 純米大吟醸
●杜氏:社員
●主要な米の品種:酒造好適米(五百万石、菊水など)、うるち米
蔵の横を流れる加治川 Photo by Kikusuisyuzo
酒米菊水の圃場 Photo by Kikusuisyuzo
ふなぐちを醸す二王子蔵のもろみの櫂入れ Photo by Kikusuisyuzo
上槽 Photo by Kikusuisyuzo
ふなぐちの缶 Photo by Yohko Yamamoto
ふなぐちの缶 Photo by Yohko Yamamoto
初代の名を冠した少量生産型の節五郎蔵。有機認証も取得 Photo by Kikusuisyuzo
同蔵の種麹振り。種麹はふなぐちの缶に入れて Photo by Kikusuisyuzo
「節五郎出品酒」 Photo by Kikusuisyuzo
復活させた「酒米菊水」の純米大吟醸原酒 Photo by Kikusuisyuzo