2023年 2/4号の週刊ダイヤモンド
連載『新日本酒紀行 地域を醸すもの』では、秋田県北秋田市の「濁酒 マタギの夢」を中心にご紹介しています🌾
雪深い秋田県阿仁地方はマタギの里。打当温泉マタギの湯は「マタギの生活を体験する」がテーマ。 Photo by Yohko Yamamoto
『地域の価値を上げ、
人を呼ぶどぶろくを目指す!』
(本文)
米の酒で起業する若者が増え、どぶろくを含む「その他の醸造酒」の免許で、ホップや果実など副原料を加えた斬新な味の酒が業界をにぎわす。この免許の最低製造量は年間6キロリットル以上。
その一方で、どぶろく特区がある。2002年に地域活性化を目的に制定された構造改革特別区域法による酒造免許の規制緩和で誕生した。
特区内の農業者が民宿や飲食店を営み、自ら育てた米でどぶろくを造る場合、最低製造量は免除。醸造場は全国に約180ある。
今年の1月、「第16回全国どぶろく研究大会in北秋田」が北秋田市で開催された。同市はどぶろくの普及に熱心で、第三セクターのマタギの里観光開発が運営する打当温泉マタギの湯には、見学可のどぶろく工房を併設。宿泊客へ出すどぶろくは非加熱の生酒で、フレッシュでとろりと甘酸っぱく名物の熊鍋にも合うと評判だ。
代表の仲澤弘昭さんは「どぶろくを宿の強みに」と願う。
研究大会には21府県から82銘柄が集まり、淡麗と濃芳醇の2部門で審査が行われ、どぶろく工房は淡麗の部で優秀賞に。
最優秀賞は高知県勢が占め、淡麗の部でトップのどぶろく工房香南の岡崎祝壽さんは、高知県濁酒研究会の会長も務める86歳。
高知県の酒造好適米の土佐麗(とさうらら)を50%精米し、吟醸用酵母を用いて3段仕込みの大吟醸級で勝負を懸けた。
「高知県工業技術センターの指導も仰ぎ、会員同士で情報交換した成果」と岡崎さんは努力を語る。
特区制定から21年、もろみを濾(こ)さない日本酒の原点どぶろくは、農業と醸造、地域の未来を背負って進化する。
↑「濁酒 マタギの夢」
●打当温泉マタギの湯 どぶろく工房・秋田県北秋田市阿仁打当字仙北渡道上ミ67 ●代表銘柄:濁酒 マタギの夢
●杜氏:佐藤美根子 ●主要な米の品種:あきたこまち
宿は「マタギの生活を体験する」がテーマ。熊がお出迎え
どぶろく工房香南さんの受賞酒のラベル。原料、製法のこだわりが記載される。
6工房全員が受賞した高知県濁酒研究会のメンバー
撮影と文/ 日本酒と食のジャーナリスト 山本洋子
※週刊ダイヤモンド2023年2月4日号より転載