『亡き父と金子美登氏の思いを継承。
無農薬米で醸す自然酒』
埼玉県比企郡小川町
(本文)
耕作面積の約19%が有機栽培という埼玉県小川町。有機農業の里として知られ、中でも下里地区は、地域ぐるみの取り組みが、2010年の農林水産省主催「豊かなむらづくり全国表彰事業」で最高賞の天皇杯を受賞。
そのきっかけをつくった人物が金子美登(よしのり)さんだ。1971年から孤軍奮闘で持続可能な有機農業を実践。エネルギー自給を含めた循環型農業を行い、共感した若者が集まり、農家塾を開いて研修者を受け入れ、今までに150人以上の後継者が育った。
小川町の晴雲酒造4代目の中山雅義さんは、日本酒の売り上げが陰りを見せたころ、付加価値のある酒と無農薬米を探していた。
そのとき、町役場から紹介されたのが金子さんだ。循環農法に賛同し、米代を一切値切らず購入。88年に純米「おがわの自然酒」が誕生した。
米の量が足りず、純米吟醸酒は、有機栽培に町ごと取り組む山形県高畠町の無農薬米を合わせて醸し、自然農法で地域をつなぐ酒となる。
04年、金子さんと雅義さんは「無農薬で米作りから酒造りを楽しむ会」を始めた。手で苗を植え、稲を刈り、伝統産業の和紙を漉いて酒のラベルを作る体験会だ。
05年には蔵の隣に、無農薬野菜とお酒が楽しめる「自然処玉井屋」を開店。地域と農家、消費者を結ぶ役割を担うが、その後、雅義さんは旅立ち、今年の9月24日に金子さんが急逝。
今、酒蔵は雅義さんの息子の健太郎さんが5代目を継ぎ、2人の思いを酒造りで継承する。
↑「純米 おがわの自然酒」
●晴雲酒造・埼玉県比企郡小川町大塚178-2
●代表銘柄:純米吟醸 おがわの自然酒、大吟醸 大晴雲、純米 晴雲、吟醸 晴雲
●杜氏:吉原卓夫
●主要な米の品種:美山錦、さけ武蔵、彩のかがやき、五百万石
蒸し米 Photo by Seiunsyuzou
麹菌を振る Photo by Seiunsyuzou
もろみの櫂入れ Photo by Seiunsyuzou
蔵直営「自然処玉井屋」では無農薬野菜が食べられる
おがわの自然酒 Photo by Y.Y
3種飲み比べセット Photo by Yohko Yamamoto
蔵売店 Photo by Y.Y
仕込水の「玉の井戸」は飲用OK Photo by Y.Y
コイン式酒サーバーを設置 Photo by Y.Y
旧仕込蔵を酒蔵資料館にし、昔の酒造道具を展示 by Y.Y
昔の酒造道具。木の道具がいっぱい by Y.Y
5代目の中山健太郎さん by Y.Y
純米吟醸「おがわの自然酒」 by Y.Y
純米吟醸「おがわの自然酒」 by Y.Y
純米の裏ラベル by Y.Y
取材&文 山本洋子