新日本酒紀行 地域を醸すもの 日本酒

新日本酒紀行 地域を醸すもの・花邑266 

 

登録有形文化財の両関酒造。土蔵造りと漆喰仕上げの壁が特徴↑登録有形文化財の両関酒造。美しい土蔵造り、漆喰仕上げの壁が特徴で有形文化財に登録されています。この蔵で、近年、大人気となった酒「花邑」。じつは最初の酒質設計のときに、あの蔵のアドバイスをいただいていたのです。そして、製造課長として陣を取るのは、元警官という異色経歴の山内めぐみさん!この存在が大★ Photo by Yohko Yamamoto

新日本酒紀行 地域を醸すもの「花邑

秋田県湯沢市

『老舗蔵の伝統と創造力!
 新ブランドでつなぐ高品質な酒造り』

(本文)

 秋田県湯沢市は東洋一と称された佐竹藩直営の院内銀山があり、1606年から1954年の閉山まで興隆を極めた。豪雪地帯で水に恵まれ、良質な米の産地に発展。

 そんな湯沢で1874年に創業した両関酒造。7代伊藤仁右衛門は、日本醸造協会の酒造技術講習会を受けて技術を研鑽し、低温長期醸造法を確立。 

 きめの細かい上質な酒を醸す技術は他の蔵へ公開し、湯沢は東北の灘と呼ばれる名酒地に。

 明治から大正にかけて建造した母屋と四つの内蔵は、登録有形文化財に指定され、今も現役だ。

 最盛期は製造量2万石を誇ったが、経済酒が主で時代とともに消費量が減少。その窮状を知った人から、山形県の高木酒造、高木辰五郎さんとの縁をつないでもらう。酒米の雄町と陸羽田の調達や、酒名「花邑」の命名など様々な助言をもらった。

 元神奈川県警の警官で、結婚・出産を経て入社した門外漢だったが、仕事の早さと的確さが光り、製造責任者に抜擢。2020年からは、山内さんをリーダーとする新体制に。

 花邑に続き、県産米に特化した「翠玉」も人気を博し、全国の地酒専門店から注文が殺到。

 社長の伊藤康朗さんのモットーは「酒は人づくり」。創業時から杜氏は社内で育て、伝統の継承と創造力を大事にする。

 高品質な酒で次世代へつなぐ。

花邑 純米吟醸 雄町↑『花邑 純米吟醸 雄町』
両関酒造・秋田県湯沢市前森4-3-18
●代表銘柄:花邑、翠玉、雪月花、両関
●製造課長:山内めぐみ
●主要な米の品種:雄町、陸羽田、酒未来、出羽燦々、愛山、秋田酒こまち、美郷錦