週刊ダイヤモンド 2022年 5/21号の連載「新日本酒紀行 地域を醸すもの」は静岡県静岡市の酒蔵、萩錦酒造さんをご紹介しています!
酒蔵外観 Photo by Yohko Yamamoto
『自噴する極上の軟水を仕込み水に、
若夫婦が挑む新たな静岡の酒』
酒の約85%は水が占め、ミネラル分が多い硬水で仕込むと酵母の栄養源が多く、発酵が旺盛になり短期間で酸味のある辛口酒に。
逆に軟水は発酵の進み方が緩やかなため、まろやかでフルーティな酒になるといわれる。理想の水を求めてくみに行く酒蔵もあるほどだ。
静岡市駿河区、登呂遺跡近くの萩錦酒造は、「平成の名水百選」に選ばれた安倍川の伏流水が敷地内に大量に自噴する。
1876年に、初代がこの水にほれて酒造を開始。現在は5代目の萩原綾乃さんが杜氏を担うが、先代の杜氏は4代目の妻で綾乃さんの母、郁子さんが務めた母娘2代杜氏だ。
綾乃さんは美術大学を卒業後、東京で美術講師になり、建築士の知令さんと結婚した。2016年、蔵を継ぐ準備で夫婦は静岡へ移住し、仕事も継続しながら冬場は綾乃さんの両親と共に酒造りを手伝った。
だが、2年後に父が急逝。その冬から母と夫婦の酒造りが始まる。無我夢中でやり切った翌年から、杜氏を綾乃さんにバトンタッチ。
長い間、萩錦の酒造りは静岡酵母で速醸酛一辺倒だったが、夫婦で模索し新たな味に挑戦。
実は知令さんは熊本県の酒蔵の次男坊。設計の道へ進んだが、結婚して蔵元になったことに運命を感じていた。
工程を見直し、米洗いは10kg単位、1度に仕込む量もグンと減らして丁寧一筋に歩むと決めた。
個性ある食中酒をと、静岡の軟水に熊本発祥の9号酵母や生酛造りも取り入れ、爽やかな酸味と米のうま味も程よくのった2人の静岡酒を目指す。
↑「萩錦 生酛 純米酒 無濾過生原酒」
●萩錦酒造・静岡県静岡市駿河区西脇381
●萩錦酒造・静岡県静岡市駿河区西脇381
https://www.facebook.com/haginishikishuzo/
●代表銘柄:萩錦 土地の詩、駿河の生一本 駿河酔、萩錦 純米吟醸、特別純米酒 登呂の里
●杜氏:萩原綾乃
●主要な米の品種:誉富士、山田錦、ひとごこち、雄町、美山錦
●代表銘柄:萩錦 土地の詩、駿河の生一本 駿河酔、萩錦 純米吟醸、特別純米酒 登呂の里
●杜氏:萩原綾乃
●主要な米の品種:誉富士、山田錦、ひとごこち、雄町、美山錦
自噴する安倍川の伏流水 Photo by Y.Y.
萩原綾乃さん(左)と知令さん Photo by Y.Y.
和釜とこしきで米を蒸す Photo:Haginishikisyuzou
蒸し米を掘る Photo:Haginishikisyuzou
蒸し米は麹室まで手で運ぶ Photo:Haginishikisyuzou
木の麹箱 Photo by Y.Y.
麹を造る Photo:Haginishikisyuzou
仕込み蔵 Photo by Y.Y.
誉富士のもろみ Photo by Y.Y.
誉富士のもろみ Photo by Y.Y.
袋吊り Photo:Haginishikisyuzou
槽搾り Photo:Haginishikisyuzou
槽搾り Photo:Haginishikisyuzou
酒の味を確認 Photo by Y.Y.
蔵の売店 Photo by Y.Y.
生酛の酒 Photo by Y.Y.
生酛の酒 Photo by Y.Y. 拡大画像表示
兵庫県産山田錦の「萩錦 純米吟醸」 Photo by Y.Y.
誉富士の「駿河酔」 Photo by Y.Y.
登呂遺跡にちなんだ「登呂の里」 Photo by Y.Y.
グラス付き1合瓶はお土産に人気🍶 Photo by Y.Y.
(酒食ジャーナリスト 山本洋子)
※週刊ダイヤモンド2022年5月21日号より転載