週刊ダイヤモンド 2022年2月19日号・特集『伝わる文章術』
新日本酒紀行 地域を醸すもの「大鬼」京都府宮津市
鬼伝説は各地にあれど、金太郎こと坂田金時も加わった討伐で、滅ぼされたと伝わる鬼が酒呑童子。「海の京都」と呼ばれる丹後半島の大江山が本拠地だ。ズバリ!その名を冠した酒を醸すのが、京都府宮津市で1832年に創業したハクレイ酒造👹
地元丹後で山田錦栽培を目指し、永谷正治先生に指導をあおいだことも。そんな老舗蔵が、ノンアルコールの吟醸酒飲料を出した!?
↑酒蔵の売店 Photo by Yohko Yamamoto
『鬼伝説の故郷丹後にて
地元の酒米で醸す蔵に新しい風』
(本文より)
平安時代、鉞(まさかり)担いだ金太郎こと坂田金時も加わった討伐で、滅ぼされたと伝わる鬼が酒呑童子(しゅてんどうじ)。丹後半島の大江山が本拠地だ。
その酒呑童子の名を冠した酒を醸すのが、京都府宮津市で1832年に創業したハクレイ酒造。
仕込み水には、大江山に連なる由良ヶ岳の不動の滝から引いた超軟水を使い、酒の味はまろやかだ。
1999年には丹後の地で初めて山田錦の栽培に挑んだ。栽培指導の第一人者であった永谷正治先生に指導を受け、農薬と化学肥料を減らした契約農家の山田錦が見事に実り、以後、鑑評会の出品酒はこの山田錦で仕込み、地名にちなんで「香田」と命名された。その他にも、京都オリジナルの酒米である祝(いわい)や、京の輝きでも醸す。
中でも、熱烈なファンがいるのが鬼伝説の故郷、大江町毛原の棚田で育てた五百万石で醸す酒「大鬼」だ。
インパクトのある木版画のラベルは、酒米生産者が1枚ずつ手刷りするという熱の入れようで、春の生原酒は黒、火入れした酒は赤の木版画に変わる。
そんな老舗蔵が、2020年に吟醸の華やかな香りのスパークリング飲料を発売し、周囲を驚かせた。
実は、18年に「こどもびいる」や全国の地サイダー製造元で有名な友桝ホールディングスへ事業承継し、清涼飲料水で培われた技術を応用した共同開発品だ。
「日本酒を飲まない人でも吟醸の香りが楽しめる爽やかなテーブル飲料です」と12代目を継いだ友田諭さん。
おいしさの追求に新しい風が吹く。
↑『純米吟醸 生原酒 大鬼』
●ハクレイ酒造・京都府宮津市由良949
●代表銘柄:香田、酒呑童子、白嶺、HAKUREI SPARKLING(WATER・SAKE)
●杜氏:山本桂司 ●主要な米の品種:山田錦、五百万石、祝、京の輝き
酒米を運ぶ
志るしの杉玉 Photo by Y.Y.
賞状も多数 Photo by Y.Y.
米の見本。真ん中が京都府産の酒米 Photo by Y.Y.
桶や暖気樽など昔の酒造道具を展示 Photo by Y.Y.
扉に貼られたお札 Photo by Y.Y.
天保時代築の土蔵 Photo by Y.Y.
神棚 Photo by Y.Y.
仕込み蔵 Photo:Hakureisyuzo
売店で、試飲も可 Photo by Y.Y.
生酛や速醸、しぼりたて生酒など様々なアイテムがズラリ Photo by Y.Y.
大吟醸酒を搾った通称「黒粕」香りが華やか Photo by Y.Y.
「大鬼」ラベルの木版画は、1枚ずつ棚田の酒米生産者の手刷り Photo by Y.Y.
共同開発商品の「HAKUREI SPARKLING WATER」 Photo by Y.Y.
地元山田錦で醸した酒「香田」 Photo by Y.Y.
「酒呑童子 純米の生酛原酒」 Photo by Y.Y.
※週刊ダイヤモンド2022年2月19日号より転載