週刊ダイヤモンド 2021年 12/18号
新日本酒紀行 地域を醸すもの「豊盃」
青森県弘前市
↑酒蔵の外観。夕方、杉玉が光る Photo by Yohko Yamamoto
豊盃米で兄弟が醸す純米酒蔵!
津軽リンゴの果実味で大人気
(本文)
家臣や農家を鼓舞するためにうたわれたホーハイ節は、日本の民謡では珍しいヨーデル唱法を取り入れた高度な技が楽しめる明るいうただ。これにちなんだ酒米が豊盃米で、古城錦を母、レイメイを父として、1976年に青森県農業試験場で育成された。
弘前市の三浦酒造の代表銘柄「豊盃」もこの酒米に由来し、全体の7割を豊盃米の酒が占める。
米作りは蔵から半径3km以内の2軒の農家と弘前大学に委託。酒造りを担うのは蔵元の兄弟で、兄の三浦剛史さんと弟の文仁さんの2人杜氏体制になって、21年目の冬を迎える。
三浦家の祖先は酒樽や甑に巻くむしろ作りを生業にしていたが、縁あって1930年から酒造りを開始。昔は冬の酒造期になると、津軽杜氏や南部杜氏が酒造りに来ていたが、人が代わると味も変わる。それなら自分たちで酒を造ろうと、兄弟杜氏の道を選んだ。
兄が酵母培養と酒母と分析、弟が麹ともろみと、役割を分担。蔵で精米し、毎年、酒質を進化させ、設備投資も怠らない。仕込み水は蔵の背後にそびえる雄大な岩木山の伏流水で、蔵の井戸から軟水が潤沢に湧き出る。
フレッシュで津軽リンゴを思わせる蜜のような透明感ある甘さと、ほのかな酸味の調和が美しく、誰もが一口飲めば、おいしさで笑みが浮かぶ。
人気酒故に引く手あまただが、製造を増やす気は兄弟にはない。
「手間暇惜しまず、丁寧に思いを込める」を信条に、津軽の米、水、自然の恵みと情景を酒に詰める。
豊盃 特別純米酒
●三浦酒造・青森県弘前市石渡5-1-1 ●代表銘柄:豊盃 純米大吟醸、豊盃 純米吟醸、豊盃 特別純米酒、ん 純米酒 ●杜氏:三浦剛史、三浦文仁 ●主要な米の品種:豊盃米、山田錦、華吹雪、華想い
酒蔵の外観。夕方、杉玉が光る Photo by Y.Y.
酒蔵の外観 Photo by Y.Y.
酒蔵の売店 Photo by Y.Y.
兄の三浦剛史さん(右)と弟の文仁さん Photo by Y.Y.
豊盃米の特等米 Photo by Y.Y.
米袋で作ったバッグ Photo by Y.Y.
テイスティング機を導入。味わって選べて大好評 Photo by Y.Y. 拡大画像表示
テイスティング機を導入。味わって選べて大好評 Photo by Y.Y.
最新鋭の洗米機 Photo by Y.Y.
蒸し機と放冷機 Photo by Y.Y.
製麹室の入り口 Photo by Y.Y.
酒母室 Photo by Y.Y.
仕込み蔵 Photo by Y.Y.
もろみ Photo by Y.Y.
祖父が建てた築100年の蔵、清潔を徹底 Photo by Y.Y.
兄弟杜氏で20年目の記念酒は精米歩合20% Photo by Y.Y.
蔵限定酒 Photo by Y.Y.
純米酒「ん」 Photo by Y.Y.
(酒食ジャーナリスト 山本洋子)
※週刊ダイヤモンド2021年12月18日号より転載