週刊ダイヤモンド 2021年 12/11号
新日本酒紀行 地域を醸すもの「赤武」AKABU
岩手県盛岡市
↑6代目で杜氏の古舘龍之介さん Photo by Yohko Yamamoto
復活蔵で醸す美酒!
赤い兜に込めた若い情熱
(本文)
赤い兜がアイコンの酒「赤武」は、赤武酒造6代目、古舘龍之介さんが杜氏となり酒質設計を行う。
白い果実や柑橘を思わせる爽やかさがあり、様々な品評会で高評価を得る。
岩手県盛岡市で酒造りを行うが、2011年3月まで蔵は大槌町にあった。東日本大震災で高さ10メートル超の津波が町を襲い、沿岸部が壊滅状態になり、蔵は全壊。町は人口の8%を失った。
龍之介さんの父、秀峰さんは廃業を決めたが多くの応援を受け、13年に新工場を竣工。復活蔵と名付けた。
震災時、龍之介さんは東京農業大学の学生で、「辞めて蔵を手伝う」と言ったが父は制止。14年に卒業後、醸造試験場で研修をし、試験醸造した酒が良い出来で、父は息子に酒造りを任せると決心。
杜氏を任された龍之介さんは無我夢中で酒造りに没頭。暗夜のともしびとなったのは岩手県工業技術センターだ。蔵の直近にあり、日に何度も往復して指導を受けた。
目指すのは若い人の入り口となる酒で、フレッシュできれいな甘味を追求。ラベルは漢字の銘柄が多い中、赤い兜をアイコン化して個性を表現した。また、長期で働ける快適な労働環境を整え、繁忙期も週休2日制で、作業は必ず2人一組で行い夜間作業はしない。蔵内は整理整頓が徹底されて清潔。若手中心で女性も多く明るく活気がある。
「龍之介は本当に酒が好きなんです」と秀峰さんは目を細める。
「まだまだもっと酒質を上げます」と龍之介さん。
震災から10年、情熱を燃やす若武者たちが美酒を進化させる。
赤武 純米吟醸
●赤武酒造・岩手県盛岡市北飯岡1-8-60 ●代表銘柄:赤武 極上ノ斬 純米大吟醸、赤武 純米酒、赤武F ●杜氏:古舘龍之介 ●主要な米の品種:吟ぎんが、結の香
2013年に完成した酒蔵。隣は吟ぎんがの田んぼ Photo:Akabusyuzou
2013年に完成した酒蔵。隣は吟ぎんがの田んぼ Photo by Y.Y.
若手が結集したチーム赤武 Photo:Akabusyuzou
洗米・浸漬作業 Photo:Akabusyuzou
蒸し米を運ぶ Photo:Akabusyuzou
蒸し米の放冷 Photo:Akabusyuzou
酒母 Photo by Y.Y.
もろみの櫂入れ Photo:Akabusyuzou
【写真】純米大吟醸と大吟醸の絵、栓にも赤い兜が、品評会の受賞の盾
仕込み蔵の壁に純米大吟醸と大吟醸の絵が Photo by Y.Y.
ラベルを貼る Photo:Akabusyuzou
大人気の純米酒 Photo by Y.Y.
大人気の純米酒 Photo by Y.Y. 拡大画像表示
栓にも赤い兜が Photo by Y.Y.
品評会の受賞の盾 Photo by Y.Y. 拡大画像表示
大槌町で1896年に創業。当時の銘柄は「洋陽」、その後「浜娘」「赤武」と続く Photo by Y.Y. 拡大画像表示
(酒食ジャーナリスト 山本洋子)
※週刊ダイヤモンド2021年12月11日号より転載