新日本酒紀行 地域を醸すもの「稲とアガベ」INE TO AGABE
秋田県男鹿市 山本洋子:酒食ジャーナリスト新日本酒紀行
↑旧男鹿駅舎をリノベーションした稲とアガベ醸造所 Photo:Inetoagave
旧男鹿駅舎でどぶろく醸造所をスタート!
33歳の挑戦
(本文)
JR男鹿線終着駅の男鹿駅は、にぎわい創出を目指して2018年に駅舎を200m移し、駅前広場や店舗を整備。男鹿市が借り手を募った旧駅舎に「醸造所を造りたい」と挙手したのが九州男児の岡住修兵さんだ。
遡ること3年、秋田市の酒蔵にいた修兵さんと妻の郁美さんは同時期に無職になった。貯金もない危機的状況の中、修兵さんは「3年後に醸造所を立ち上げる!」と大きな目標を立てた。
初めに大潟村の自然栽培農家の石山範夫さんの門をたたく。
高級な酒は雑味の原因となる米の外側を多く削るが、無肥料米なら別だと考えた。
米作りを学ぶ傍ら仕事を掛け持ちして貯蓄。石山さんの知己を得て無肥料米の卸ルートを確保し、群馬県の土田酒造に精米90%の酵母無添加で生酛造りの酒を委託。その酒を完売し、無肥料米の低精米酒という事業モデルで銀行に融資を掛け合う。並行して東京のどぶろく醸造所の初代醸造責任者を務め、腕を磨いた。
実績を積み、秋田銀行と日本政策金融公庫から計2億円の融資が決定。男鹿の知人から駅舎の話を聞き、当地での創業を決めた。
どぶろくが造れるその他の醸造酒と輸出専用清酒の免許を取得し、21年11月に、醸造所を建てて醸造を開始した。
酒に合う料理を提供したいと、料理人兼蔵人を含む8人を雇用し、酒のもろみにリンゴやホップを加えるなど新しいおいしさを研究する。
目標は「日本酒の新規参入を認めさせること。雇用を生み出し続けること」の二つだ。
達成に向かって走り続ける。
稲とアガベ どぶろく
●稲とアガベ醸造所 ・秋田県男鹿市船川港船川新浜町1-21 ●代表銘柄:稲とアガベ どぶろく、稲とアガベ 稲とコウジ 全量米麹 ●醸造責任者:岡住修兵 ●主要な米の品種:ササニシキ、改良信交、亀ノ尾
【写真】自社田、旧駅舎の切符売り場のドアを蔵扉に、昔の改札口が蔵の裏口に
自社田 Photo:Inetoagave
旧駅舎の切符売り場のドアを蔵扉に Photo by Yohko Yamamoto
旧駅舎の切符売り場のドアを蔵扉に Photo by Y.Y.
岡住修兵さん(右)と、設計を担当した木川伸一さん。昔の改札口が蔵の裏口に Photo by Y.Y.
昔の改札口が蔵の裏口に Photo by Y.Y.
生酛の仕込み水は木片を浸漬し、硝酸還元菌を培養 Photo by Y.Y.
タンク横の扉は麹室 Photo by Y.Y.
もろみ Photo by Y.Y.
酒造スタッフと修兵さん Photo by Y.Y.
配管類は壁の表に出しメンテナンス性を向上 Photo by Y.Y.
「稲とコウジ」 Photo by Y.Y.
「稲とコウジ」 Photo by Y.Y. 拡大画像表示
蔵の隣で酒と料理を提供 Photo:Inetoagave
酒食ジャーナリスト 山本洋子