週刊ダイヤモンド 2021年 11/13号 新日本酒紀行 地域を醸すもの「不動」
千葉県香取郡神崎町
「仁勇」と創業地の成田山にちなんだ「不動」 Photo by Yohko Yamamoto
リーズナブルで高品質!
成田のお不動様にちなんだ心に響く酒
(本文)
社名の鍋店(なべだな)は、貴重な鉄を扱ったことに由来。1689年に佐倉藩から酒造株を与えられ、成田山新勝寺の門前で創業。後に利根川の水運が便利な神崎町へ移転した。
19代蔵元の大塚完さんが目指すのは「人の心に響く酒」だ。
当地は米と大豆の適地で、酒、味噌、醤油の醸造蔵が集まり醸造の町として栄えた。今、町は「発酵の町」を掲げ「発酵の里こうざき酒蔵まつり」を開催。人口5800人の町に5万人が集まる名物イベントだ。
酒蔵は古い木造で、連続蒸米機など大型の醸造設備が並ぶ。酒の核となる米麹は、珍しい2階建ての麹室で手造りを徹底する。
「味の決め手となる米麹は最も気を使います」と元杜氏で製造と営業の部長を兼任する清水嘉明さん。
銘柄は2本柱。千葉産米を中心に醸す「仁勇」と、各地の酒米で限定醸造する「不動」。製造量のトップは仁勇純米吟醸で穏やかな吟醸香とコクがあり、4合瓶で1155円というコスパの良さで大人気。不動は手間をかけた「吊るししぼり」に、生酛(キモト)、山廃、水酛など仕込み違いがそろい、酒好きを喜ばす。全体で約200種類もある。
蔵見学とテイスティングにも力を入れ、「酒造りを身近に感じ、楽しく選んでほしい」と清水さん自ら案内役を務め、リピーターも多い。
千葉の酒は品質は良いが知名度不足と、「千葉日本酒活性化プロジェクト」が発足。鍋店を含む5蔵が参加し、県内の有機栽培農家の山田錦を精米80%で醸す。
酒造り333年目、さらなる心に響く酒を追う。
不動 吊るししぼり 無濾過 純米吟醸生原酒
●鍋店 神崎酒造蔵・千葉県香取郡神崎町神崎本宿1916 ●代表銘柄:仁勇、不動 ●杜氏:児玉就範 ●主要な米の品種:美山錦、ふさこがね、秋田酒こまち
酒蔵併設の店は試飲も可 Photo by Y.Y.
酒蔵併設の店は試飲も可 Photo by Y.Y.
酒蔵併設の店は試飲も可 Photo by Y.Y.
酒肴も充実 Photo by Y.Y.
洗米・浸漬装置 Photo by Y.Y.
2階建ての麹室、1階は出麹口 Photo by Y.Y.
2階の入り口 Photo by Y.Y.
酒造工程を描いた油絵 Photo by Y.Y.
酒母室 Photo by Y.Y.
蔵の内部 Photo by Y.Y.
蔵の内部 Photo by Y.Y.
仕込み室 Photo by Y.Y.
仕込み室 Photo by Y.Y.
10日目のもろみ Photo by Y.Y.
搾りは自動醪搾機2台体制 Photo by Y.Y.
上槽した新酒はサーマルタンクで劣化を防ぐ Photo by Y.Y.
【写真】仁勇純米吟醸、5蔵共同企画の純米原酒、仁勇生酛純米吟醸原酒
仁勇純米吟醸 Photo by Y.Y.
5蔵共同企画の純米原酒 Photo by Y.Y.
仁勇生酛純米吟醸原酒 Photo by Y.Y.
酒食ジャーナリスト 山本洋子
※週刊ダイヤモンド2021年11月13日号より転載
https://www.diamond.co.jp/magazine/20242111321.html