新日本酒紀行 地域を醸すもの「琥珀浄酎」
広島県呉市三角島
↑神石高原町で有機農法を行うタナベファームの田邊真三さん Photo by Yohko Yamamoto
広島の離島と高原から世界へ!
日本酒を「浄溜」した熟成和酒
(本文より)
世界唯一の「琥珀浄酎」は、純米酒を40度以下の低温で「浄溜」する。アルコール度数は41度で、レモンで香りづけした後、木樽で熟成させる。ウイスキーのような香ばしい風味と日本酒由来のまろやかさ、爽やかさが特徴だ。
構想したのはナオライの三宅紘一郎さん。
20代の数年間、中国・上海で日本酒を販売した際、劣化しやすい日本酒は輸出に不向きと痛感し、起業。拠点は人口21人の離島、三角(みかど)島で、レモンの自然栽培も行う。
日本酒は醸造だけでアルコール度数を上げるが、焼酎はもろみを蒸留することで高いアルコールを造る。
日本酒の風味が残せる生産方法を模索し、機械メーカーと共同で特許を取得。
県内の神石高原町(じんせきこうげんちょう)の酒蔵の一角を借り、本格的な生産酒蔵を設けた。原料米は同町で有機農業を営むタナベファームに依頼。
代表の田邊真三さんいわく、「有機栽培すると稲に菌が増える。酒の酵母や菌との相互作用で酒は一層うまくなる」。
酒造りは提携する県内四つの酒蔵に、精米90%で純米酒を委託。「この連携モデルを全国に広めたい」と三宅さん。地域の特色を掛け合わせることで魅力が高まる。
積極的に島に人を招き体験してもらうと、価値観を共有した若者が集まった。三角島への渡り口、大崎下島は北前船の寄港地として栄えた島で、ここで仲間と社団法人まめなを立ち上げた。空き家を改装し、宿やカフェ、訪問介護業など事業が広がる。
「浄酎」から始まった自然環境と未来をつなぐ連携、全国展開を目指す。
『琥珀浄酎』アメリカンホワイトオーク樽熟成
●ナオライ・広島県呉市豊町久比3960三角島●代表銘柄:浄酎 白紙垂、浄酎 銀紙垂(タナベファーム米)、浄酎 金紙垂●生産責任者:三宅紘一郎●主要な米の品種:コシヒカリ、つきあかり
稲の品種はつきあかり Photo by Y.Y.
稲の品種はつきあかり Photo by Y.Y.
成長を確認する田邊さんと三宅紘一郎さん Photo by Y.Y.
大崎下島の自然栽培のレモン畑 Photo by Y.Y.
大崎下島の自然栽培のレモン畑 Photo by Y.Y.
【写真】久比浄溜所、漆喰の壁にレモンの皮、山岡酒造、蔵元の山岡克巳さん
久比浄溜所 Photo by Y.Y.
漆喰の壁にレモンの皮を塗り込む Photo by Y.Y.
提携先の酒蔵、山岡酒造 Photo by Y.Y.
蔵元の山岡克巳さん Photo by Y.Y.
浄酎 Photo by Y.Y.
神石高原浄溜所 Photo by Y.Y.
神石高原浄溜所と木樽 Photo by Y.Y.
神石高原浄溜所と木樽 Photo by Y.Y.
【写真】浄酎シリーズ、ミニ3本セット、診療所を改装したまめなの拠点
浄酎シリーズ Photo by Y.Y.
ミニ3本セット Photo by Y.Y.
説明書
診療所を改装したまめなの拠点 Photo by Y.Y.
酒食ジャーナリスト 山本洋子
※週刊ダイヤモンド2021年10月30日号より転載
https://www.diamond.co.jp/magazine/20245103021.html