週刊ダイヤモンド 2021年 9/25号 連載
『新日本酒紀行 地域を醸すもの』
山梨県山梨市北
「養老 玉笹」
↑カフェの看板の奥は鎮守の森 Photo by Yohko Yamamoto
古くて小さな蔵の滋味深い酒』
(本文より)
ミネラルウオーター生産量日本一の山梨県は、50年前まで日本酒の造り酒屋は50軒あったが、今は9軒を残すのみと激減。
「その中でも一番小さい酒蔵です」と、養老酒造6代目兼杜氏の窪田裕光さんは言う。
蔵のすぐ近くには、日本最古の木造大鳥居を有する大井俣窪八幡神社があり、春は桜の名所だ。武田信玄が造営を加え、国指定重要文化財9棟を誇るが、現在、神主は常駐せず静かに佇む。
日本酒の売り上げが陰りを見せていた1999年に、築200年近い蔵の母屋を改装。養蚕場だった2階を喫茶や酒が楽しめるカフェ酒蔵櫂(かい)に。
酒造りは裕光さんが1人で担い、洗米、麹造り、搾り、瓶詰め、営業に経理をこなす。
「酒を造るのは神様、目に見えない微生物で、造りやすい環境を整えることが私の仕事です」。
仕込み水は秩父山系の笛吹川の伏流水。諏訪杜氏から引き継いだ酒の味は、昔ながらで滋味深い。
酒の副産物である酒粕はカフェで粕汁や粕漬け、甘酒などに使われ、不足気味。「ありがたくて、カスなんて呼べません」と裕光さん。
カフェと売店は妻の尚子さんが担当。元は店の常連客で、義母に飲みっぷりを気に入られたのが縁で結婚した。
「みんな下戸で、飲むのは私一人です(笑)」と尚子さん。
夫婦二人三脚でもてなす古くて小さな蔵の温かさ。
酒蔵見学後に蔵で飲める体験が人気で、週末は県外の客でにぎわう。
お酒好きな尚子さんを見て裕光さんが言う。
「酒を飲む人の人生は楽しい、その楽しさのもとを造れる職業は幸せです」。
↑『養老 玉笹 純米大吟醸生原酒』
●養老酒造・山梨県山梨市北567
●代表銘柄:六波 純米生原酒、櫂 本醸造生原酒、567 大吟醸生原酒、金盃 養老
●杜氏:窪田裕光 ●主要な米の品種:美山錦、山田錦
昔のほうろう製看板と蔵 Photo by Y.Y.
蔵外観 Photo by Y.Y.
杉玉が下がる門構え Photo by Y.Y.
蔵の1階 Photo by Y.Y.
蔵の1階の奥にはストーブと板の間コーナーが。 Photo by Y.Y.
2階へ上がる階段。ここで靴を脱ぎます。 Photo by Y.Y.
戦前の味のある古い木製看板 Photo by Y.Y.
酒蔵の鬼瓦は養老の恵比寿様 Photo by Y.Y.
米を蒸す甑(こしき) Photo:Yourousyuzo
窪田裕光さんと尚子さんご夫妻 Photo by Y.Y.
結婚記念の利き猪口に麹菌が入っていました。Photo by Y.Y.
酒は全量を槽で搾っています。 Photo by Y.Y.
酒は全量を槽で、裕光さんが搾っています。Photo:Yourousyuzo
搾りたての酒は黄金色に輝いて。
酒蔵見学は要予約 Photo:Yourousyuzo
2階の酒蔵カフェ櫂。昔は養蚕部屋だったそうです。 Photo by Y.Y.
酒は飲んで買えます。 Photo by Y.Y.
飲み比べセットもあり。 Photo by Y.Y. 拡大画像表示
人気の粕汁と鮭の粕漬け Photo by Y.Y.
2階からの眺め Photo by Y.Y.
蔵すぐ近くにある、重要文化財の大井俣窪八幡神社 Photo by Y.Y.
養老酒造の樽が飾られていました。重要文化財の大井俣窪八幡神社
※週刊ダイヤモンド2021年9月25日号より転載
蔵の2階から、瓦屋根にタイザンボクの庭木を見て、なごみます〜