週刊ダイヤモンド 2021年 7/3号の連載『 新日本酒紀行 地域を醸すもの』では、山口県萩市大字吉部下の八千代酒造さん「ROOM La+YACHIYO」を紹介しています。
↑5代目で杜氏の蒲(かば)久美子さん Photo by Yohko Yamamoto
『飛び切りの空間をつくる
萩の酒を目指して』
(本文より)
2021年3月、山口県萩市と阿武町の6蔵が、国税庁から産地をブランド化する地理的表示(GI)「萩」に指定された。その1蔵が八千代酒造で、5代目の蒲久美子さんが杜氏を担う。
蔵が立つ旧むつみ村は、山と田んぼに囲まれた全戸数700世帯弱の小さな集落。
その地、唯一の酒蔵だ。
実は、蔵を継ぐのは妹のはずだった。
妹は東京農業大学を卒業後、急に結婚を決め鹿児島県へ移住してしまう。
伝統ある酒蔵が廃業してはと、東京で15年間、栄養士を務めていた久美子さんは17年にUターン。35歳の決断だった。
だが、酒造りの経験は皆無。
助け舟を出してくれたのが、市内の澄川酒造場の澄川宜史さんだ。蔵で酒造りの理論と実践を教わり、「自分の酒を設計して造りなさい」と、醸造の場を貸してくれた。
どんな酒にするか悩み、浮かんだのが、東京時代の酒の持ち寄り会の光景。仕事を終えて、みんなでおいしい酒を飲むと疲れが取れ、笑顔が生まれた。
「部屋でくつろいで楽しむ酒、明日への活力になる酒」と、華やかで甘味と透明感ある酒質を設計し、銘柄は「ROOM」に。
原料米は自社田を含む萩の米で、精米も地元で行う。
萩市と阿武町の集落営農法人と酒蔵6社が共同出資し、萩酒米みがき協同組合を17年に発足。
萩の酒蔵は酒米から精米、醸造まで地元で一貫して行う体制が整い、GIの指定にもつながった。
「伝統は挑むことで価値を生み出せる。萩の名に恥じない酒で100年先もつながる蔵に」と久美子さんは未来の扉を開く。
※GI … Geographical Indication
↑ROOM La+ YACHIYO 純米吟醸 山田錦
●八千代酒造・山口県萩市大字吉部下3306
●代表銘柄:ROOM La+ YACHIYO Green Breese 純米吟醸 西都の雫
●杜氏:蒲 久美子 ●主要な米の品種:山田錦、西都の雫
GI萩の詳細はこちらに詳しく↓
萩市・阿武町編 日本酒「GI萩」
自社田の山田錦 Photo by Y.Y.
自然豊かな吉部下地域、蔵から徒歩3分のところにある田んぼ Photo:Yachiyosyuzo
Photo:Yachiyosyuzo
設備が整う澄川酒造場を借りて麹造りともろみ管理を行う Photo:Yachiyosyuzo
設備が整う澄川酒造場を借りて麹造りともろみ管理を行う Photo:Yachiyosyuzo
設備が整う澄川酒造場を借りて麹造りともろみ管理を行う Photo:Yachiyosyuzo
築100年以上の八千代酒造 Photo by Y.Y.
麹室。この蔵で造る銘柄は「八千代」 Photo by Y.Y.
麹室。この蔵で造る銘柄は「八千代」 Photo by Y.Y.
【写真】米を蒸す木製甑、共に酒造りを行う母、手動・電動ポンプ
木製甑で米を蒸す Photo by Y.Y.
少量蒸す時に使う木桶 Photo by Y.Y.
槽搾りの前で、共に酒造りを行う母の文代さんと Photo by Y.Y.
手動ポンプ Photo by Y.Y.
電動ポンプ Photo by Y.Y.
西都の雫のROOM Photo by Y.Y.
山田錦のROOMの裏面 Photo by Y.Y.
※週刊ダイヤモンド2021年7月3日号より転載
週刊ダイヤモンド 2021年 7/3号 ゴルフ復活!