福島県喜多方市
蔵の名前は、日本百名山の飯豊山の麓で「飯豊蔵」と命名した。仕込み水は山の伏流水
Photo by Yohko Yamamoto
↑ 蔵のある場所
『米作りからエネルギーまで、
喜多方で賄う地酒蔵』
(本文)
福島県喜多方市と奈良県は直線距離で500kmも離れているが、太い絆があり移住者も多い。
江戸時代中期、奈良の大和川の岸辺で綿花栽培を営む本家から分家し、喜多方に移住後、1790年に酒蔵を創業した大和川酒造店。その200年後の1990年に濁川(にごりがわ)の岸辺に最新鋭の酒造設備の飯豊(いいで)蔵を建てた。歴史ある元の酒蔵は北方風土館に改装し、売店やホールも併設して喜多方の新たな観光名所になった。
蔵は9代目佐藤彌右衛門さんが会長、弟の和典さんが社長で前杜氏。彌右衛門さんの息子で兄の雅一さんが専務を、弟の哲野さんが杜氏を務める、2世代兄弟による酒造り。全国新酒鑑評会で8年連続金賞を受賞した実力派だ。
2007年に農業法人大和川ファームを立ち上げ、原料米を自社栽培で賄う。35haの自社田で酒米の福の香、夢の香、山田錦を、無農薬か減農薬で栽培する。そのほかに、飯館村など酒蔵がない地域の農家からの委託醸造も。「地元の水で仕込んでほしいと、持ってくる農家もあります」と和典さん。通常の仕込み水は飯豊山(いいでさん)の雪解け水の伏流水で、優しい味の軟水だ。
蔵の目標は喜多方で自給する酒造り。米、水、造り手に加えエネルギーまで賄う酒蔵を目指す。すでに近くの川の水力発電施設とメガソーラーを持ち、通年の発電量換算で、電力の自給はクリア。残すは熱源で、籾殻をチップ化しボイラーで燃やすことに挑戦中。
エネルギーまで自給する蔵、実現すれば日本初だ。
↑ 純米 彌右衛門 オンラインショップ
●大和川酒造店・福島県喜多方市字寺町4761●代表銘柄:純米大吟醸 いのち、純米大吟醸 四方四里、純米吟醸 彌右衛門、純米辛口 彌右衛門●杜氏:佐藤哲野●主要な米の品種:福の香、夢の香、山田錦
蔵の前は濁川。河川敷は公園 Photo by Y.Y.
明るく清潔な仕込み場 Photo by Y.Y.
床にものを置かない。整理整頓が徹底 Photo by Y.Y.
麹室で杜氏の佐藤哲野さん Photo by Y.Y.
もろみの香りを確認する社長の佐藤和典さん Photo by Y.Y.
喜多方市の街中の旧蔵を改装した北方風土館。
昔の酒蔵の様子が分かる
江戸蔵
喜多方市の街中の旧蔵を改装した北方風土館。昔の酒蔵の様子が分かる
江戸蔵には、昔、酒蔵で使われていた道具が並ぶ
陶器製の通いどっくり
漏斗を置く陶器
大正蔵は、蔵を生かした酒の展示が
大吟醸 会津の冬
フラッグシップとなる酒、純米大吟醸「いのち」
売店は試飲も可。
会津喜多方産の山田錦で醸した純米大吟醸「いのち」もテイスティング可
「いのち」のボトルラベル、裏面
福嶋県産の桃を贅沢に使ったリキュール「桃の涙」
メニュー表
さまざまな商品が一同に揃い買い物OK
酒粕を使った酒かす酒米せんべいもあり!
酒食ジャーナリスト 山本洋子
※週刊ダイヤモンド2021年2月20日号より転載