新日本酒紀行 地域を醸すもの 日本酒

週刊ダイヤモンド 新日本酒紀行 地域を醸すもの・彌右衛門 NO.197

週刊ダイヤモンド2月20日号

新日本酒紀行 地域を醸すもの「彌右衛門」

福島県喜多方市

山本洋子:酒食ジャーナリスト 

蔵の名前は、日本百名山の飯豊山の麓で「飯豊蔵」と命名した。仕込み水は山の伏流水
Photo by Yohko Yamamoto

↑ 蔵のある場所

『米作りからエネルギーまで、

  喜多方で賄う地酒蔵』

(本文)

福島県喜多方市と奈良県は直線距離で500kmも離れているが、太い絆があり移住者も多い。

江戸時代中期、奈良の大和川の岸辺で綿花栽培を営む本家から分家し、喜多方に移住後、1790年に酒蔵を創業した大和川酒造店。その200年後の1990年に濁川(にごりがわ)の岸辺に最新鋭の酒造設備の飯豊(いいで)蔵を建てた。歴史ある元の酒蔵は北方風土館に改装し、売店やホールも併設して喜多方の新たな観光名所になった。

蔵は9代目佐藤彌右衛門さんが会長、弟の和典さんが社長で前杜氏。彌右衛門さんの息子で兄の雅一さんが専務を、弟の哲野さんが杜氏を務める、2世代兄弟による酒造り。全国新酒鑑評会で8年連続金賞を受賞した実力派だ。

2007年に農業法人大和川ファームを立ち上げ、原料米を自社栽培で賄う。35haの自社田で酒米の福の香、夢の香、山田錦を、無農薬か減農薬で栽培する。そのほかに、飯館村など酒蔵がない地域の農家からの委託醸造も。「地元の水で仕込んでほしいと、持ってくる農家もあります」と和典さん。通常の仕込み水は飯豊山(いいでさん)の雪解け水の伏流水で、優しい味の軟水だ。

蔵の目標は喜多方で自給する酒造り。米、水、造り手に加えエネルギーまで賄う酒蔵を目指す。すでに近くの川の水力発電施設とメガソーラーを持ち、通年の発電量換算で、電力の自給はクリア。残すは熱源で、籾殻をチップ化しボイラーで燃やすことに挑戦中。

エネルギーまで自給する蔵、実現すれば日本初だ。

 

img_0408cd67d0006eda9619f3ea2ef84ab478050.jpg

↑ 純米 彌右衛門 オンラインショップ


大和川酒造店・福島県喜多方市字寺町4761●代表銘柄:純米大吟醸 いのち、純米大吟醸 四方四里、純米吟醸 彌右衛門、純米辛口 彌右衛門●杜氏:佐藤哲野●主要な米の品種:福の香、夢の香、山田錦

 

img_08931857ea23f003161f953f1979b57e596336.jpg

蔵の前は濁川。河川敷は公園 Photo by Y.Y.

img_eeb498ff2e32a34a6855aa89f076cd30459509.jpg

明るく清潔な仕込み場 Photo by Y.Y.

img_e67a739e1e54cf37f4f118ef2cf31f2e397888.jpg

床にものを置かない。整理整頓が徹底 Photo by Y.Y.

img_0825400f8e24c3ba1185634d4597c8cb483321.jpg

麹室で杜氏の佐藤哲野さん Photo by Y.Y.

img_3cd3eb07957cf282e4a474bee009f64a387985.jpg

もろみの香りを確認する社長の佐藤和典さん Photo by Y.Y.

次のページ

【写真】喜多方市の街中の旧蔵を改装した北方風土館

img_bd22ed22c22e70236164eeba584f2a03423347.jpg

喜多方市の街中の旧蔵を改装した北方風土館

img_771f88c144bce2c66a5417377c9270d9403152.jpg

昔の酒蔵の様子が分かる 

img_e1adafe7960cccd5caade009b16539e6378797.jpg

江戸蔵

img_f292546d6b4670dea23a32f952cc2418416798.jpg

喜多方市の街中の旧蔵を改装した北方風土館。昔の酒蔵の様子が分かる 

江戸蔵には、昔、酒蔵で使われていた道具が並ぶ

img_3830ac53642441f6e39313492c4e4525550479.jpg

陶器製の通いどっくり

img_4ef07690b523651cfbd8f9ca332afe91520025.jpg

漏斗を置く陶器

img_c61d45b865a2201295e16cf0e7d6f704265901.jpg

大正蔵は、蔵を生かした酒の展示が 

大吟醸 会津の冬

img_57a94435537b9f8115f58ac8af88b6e5518778.jpg

フラッグシップとなる酒、純米大吟醸「いのち」

img_5856f359f1b3548c8288c014b136ea03367300.jpg

売店は試飲も可。
会津喜多方産の山田錦で醸した純米大吟醸「いのち」もテイスティング可

 

img_91e5a5ea96468852c5fd09753416681c532472.jpg

「いのち」のボトルラベル、裏面

img_a64482eb2a5ac431c1372db0d1a53d29207660.jpg

福嶋県産の桃を贅沢に使ったリキュール「桃の涙」 

メニュー表

さまざまな商品が一同に揃い買い物OK

酒粕を使った酒かす酒米せんべいもあり!

酒食ジャーナリスト 山本洋子

週刊ダイヤモンド2021220日号より転載


http://www.yauemon.co.jp