新日本酒紀行 地域を醸すもの 日本酒

新日本酒紀行 地域を醸すもの・A.BIRTH NO.339

新日本酒紀行「A.BIRTH(エーバース)」
種籾の消毒と選別 Photo by a.base

新日本酒紀行 地域を醸すもの・A.BIRTH (エーバース)

秋田県横手市

「この風景を瓶に詰めたい」。
亡き父・夏田冬蔵にささげる亀の尾の酒

 「この風景を瓶に詰めたい」と語り、夏は田んぼで米作り、冬はその米で酒造りの人生で夏田冬蔵と自らを名乗った森谷康市さん。
地元、秋田県横手市平鹿町の圃場保全に力を注ぎ、土地改良区の理事を務めた。
業界内外から慕われ、全国から講演会に呼ばれる人気者。だが、2019年夏の田んぼで倒れ、62歳で帰らぬ人に。

   残された30ヘクタールの田んぼを、三男の友樹さんが銀行職を辞めて継承した。
地域農業の活性化と、酒米での酒造りを目標に、20年にa .base(エーベース)を設立。メンバーには父の薫陶を受けた蔵人や飲食店などが加わり、父が得意とした酒米の亀の尾や飯米と、雇用と収入確保のため果実や菊芋も栽培。 しかし、亀の尾は父の逝去と共に売り先が消えた。失意の友樹さんに手を差し伸べたのが秋田市のすし店を営む小島良太さんだ。父との交流で亀の尾のシャリに興味を持ち、米を全量切り替え、買い支えてくれた。 また、この冬、自己商標酒類卸売業免許を取得し、亀の尾の委託醸造に挑戦。

酒造りを担うのは、父をよく知る阿櫻酒造杜氏の照井俊男さんと副杜氏の酒井太一さん。
 米の個性を生かす設計をと、種麹、酵母、醪もろみの経過を指定。醸造も共に行い、夏田冬蔵が愛した亀の尾の味を再構築。爽快な苦・渋味に鮮やかさもある酒に仕上がり、「A.BIRTH(エーバース)」と命名。  次なる目標は酒造りだ。国内向け日本酒製造の新規免許は下りないが、横手市はどぶろく特区に認定済み。米を育て、どぶろくを醸し、夏田冬蔵へ突き進む。

新日本酒紀行「A.BIRTH(エーバース)」
A.BIRTH
a.base・秋田県横手市平鹿町浅舞字後野1-1、阿櫻酒造・秋田県横手市大沢字西野67-2
●代表銘柄:A.BIRTH
●杜氏:照井俊男  ●主要な米の品種:亀の尾
新日本酒紀行「A.BIRTH(エーバース)」
種籾の消毒と選別 Photo by a.base
新日本酒紀行「A.BIRTH(エーバース)」
洗米作業 Photo by a.base
新日本酒紀行「A.BIRTH(エーバース)」
洗米作業 Photo by a.base
新日本酒紀行「A.BIRTH(エーバース)」
浸漬 Photo by a.base
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蒸し米作業 Photo by a.base
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蒸し具合を確認 Photo by a.base
新日本酒紀行「A.BIRTH(エーバース)」
麹室 Photo by a.base

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