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新日本酒紀行 地域を醸すもの・出雲地伝酒 NO.325
『醪に秘伝の木灰を加えて搾る、
濃厚なうま味と甘味の料理酒』
島根県松江市
(本文)
味付けの基本「さしすせそ」は、砂糖、塩、酢、醤油、みその頭文字で、味付けの順番を覚えやすくしたものだ。最初の砂糖は、サトウキビを原料にしたものが一般的で、日本の庶民が使いだしたのは江戸時代の後期。それまでの甘味調味料は米を発酵させた麹や酒、味醂だった。
城下町、島根県松江市は、中海と宍道湖に挟まれた水の都。7代藩主の松平治郷が茶文化を広め、汽水湖の宍道湖で取れるスズキやシジミなどを宍道湖七珍と呼び、食文化が花開く。
そんな出雲地方で生まれたのが地伝酒だ。原料にもち米を使い、米麹は日本酒の2倍量、仕込み水は日本酒の約半分という濃厚な造りを行い、じっくり寝かせた醪(もろみ)に木灰を加え、中和させてから搾るのが特徴。火入れ殺菌の代わりに灰で殺菌するため灰持酒(あくもちざけ)とも呼ばれ、熊本県の赤酒も類酒だ。
だが、戦時中の食糧統制により製造が禁止に。戦後半世紀を経て、味や醸造法を知る人が絶えるのを憂えた地域文化の篤志家や料理店が、米田酒造に復活製造を依頼。試験醸造を重ねて、1990年に復刻した。
濃い甘味とうま味は、名物の野焼き蒲鉾や、出雲そばのつゆをおいしくし、出雲の食に不可欠の料理酒になる。米田酒造は粕取り焼酎で仕込む本格的な味醂も製造し、秋から翌年4月までは日本酒を、5月からは味醂と地伝酒、6月は梅酒、その後は焼酎と、多品種の酒造りを行う。
旧蔵を改装した売店では試飲もでき、庭の茶室では、酒を楽しむ会を開催。郷土の味を今に伝える。
濃い甘味とうま味は、名物の野焼き蒲鉾や、出雲そばのつゆをおいしくし、出雲の食に不可欠の料理酒になる。米田酒造は粕取り焼酎で仕込む本格的な味醂も製造し、秋から翌年4月までは日本酒を、5月からは味醂と地伝酒、6月は梅酒、その後は焼酎と、多品種の酒造りを行う。
旧蔵を改装した売店では試飲もでき、庭の茶室では、酒を楽しむ会を開催。郷土の味を今に伝える。
醪に木灰を入れて混ぜる、マーブル模様に Photo by Yonedasyuzou
混ざった状態はまるでカフェオレ Photo by Yonedasyuzou
醪を酒袋に入れ、槽に積み重ねてゆっくりと搾る Photo by Yonedasyuzou
旧蔵を改装した味のある売店 Photo by Yohko Yamamoto
売店は松江市の街中にあります Photo by Yohko Yamamoto
元の蔵を活用し、当時使っていた道具類などを飾り、良い味が出ています。Photo by Yohko Yamamoto
昔の道具が随所にあしらわれて楽しい。 Photo by Yohko Yamamoto
「酒」と彫られた木の看板。昔の道具が随所に Photo by Yohko Yamamoto
島根県松江市の原料で醸した純米吟醸酒「松江づくし」Photo by Yohko Yamamoto
売店の奥には、庭園があり、見事な松も Photo by Yohko Yamamoto
茶室「豊秋庵」では、お酒を楽しむ会をときどき開催しています。詳細はInstagramを。
https://www.instagram.com/toyonoaki_official/ Photo by Yohko Yamamoto
「出雲地伝酒」のラベル。甘さは味醂の約半分、特徴がいっぱい。Photo by Yohko Yamamoto
熟成させ、琥珀色をした「出雲地伝酒」飲んでも深みがあって滋養あり。 Photo by Yohko Yamamoto
地伝酒復活の一役を担った松江市の「神代そば」は、おつゆに地伝酒を使用 Photo by Yohko Yamamoto
人気メニュー「松江松平そば 酒」のお酒はもちろん「豊の秋」🍶 Photo by Yohko Yamamoto
酒粕で粕取焼酎を造り、仕込みに加えた本みりん。「本みりん 七寶 酒粕取焼酎仕込」 Photo by Yohko Yamamoto
※米田酒造公式インスタグラムhttps://www.instagram.com/toyonoaki_official/
(酒食ジャーナリスト 山本洋子)
※週刊ダイヤモンド2023年12月16日号より転載
週刊ダイヤモンド23年12月16日号
ソニー・ホンダの逆襲
https://www.diamond.co.jp/magazine/20243121623.html