剣菱酒造の浜蔵の大きな樽看板 Photo by Yohko Yamamoto
週刊ダイヤモンド23年11月11日号 連載 新日本酒紀行 地域を醸すもの では兵庫県神戸市の老舗酒蔵「剣菱」KENBISHIをご紹介しています!
(本文より)
赤穂浪士が討ち入り前に飲んだとされる「剣菱」は、江戸で大ブームになり「剣菱を飲むことを『ケンビる』といったそうです」と蔵元の白樫政孝さん。
伊丹で1505年に創業した剣菱酒造は、5家が交代して酒造りを受け継ぎ「剣菱は地酒でなく、下り酒」との矜持を持つ。
地元消費の酒ではなく、江戸市場に向けた酒で「日本中の食材や調理法が集まる江戸の味に合うよう設計。
「海の物にも山の物にも70%合います」と白樫さん。
家訓の「止まった時計でいろ」は、1日に2回正確な時間を指すとの深い意味を持つ。
酒の造り方を最後に変えたのは220年前。仕込み水の量を増やして以後、変更はない。
酒米は山田錦を主にし、全量を木甑(きごしき)で蒸す。
麹は手間と時間を要する蓋麹(ふたこうじ)造りを行う。酒母40日、醪(もろみ)35日仕込みの計75日をかけて醸す。
新酒は売らず、熟成させてからブレンドして出荷と、昔造りを徹底する。
伝承醸造を守るために木の道具を多用するが、木工職人は減る一方。
そこで、2017年に蔵に木工所を新設した。甑、桶、櫂棒(かいぼう)、暖気樽(だきだる)を製造し、他蔵の注文も受ける。地元の杉や竹を用い、良い材を求めて山も管理。
また、藁をなう機械を導入し、酒樽を縛る極太の藁縄も作る。農業法人として稲も栽培し、自前の藁をなう。
22年4月、酒蔵の一つを改装して「灘五郷酒所(なだごごうさけどころ)」を開店した。
灘五郷26蔵全ての酒が飲め、国内外の客が訪れる新名所に。「古今第一」の酒蔵は、連綿と受け継がれた酒の楽しさを伝え、未来へつなぐ。
↑代表商品「瑞穂黒松剣菱」https://www.kenbishi.co.jp/product/sake4/#product
◉DATA
●剣菱酒造・神戸市東灘区御影本町3-12-5
●代表銘柄:剣菱、黒松剣菱、極上黒松剣菱、瑞祥黒松剣菱
●杜氏:社員
●主要な米の品種:山田錦、愛山、雄町
特A地区吉川町産の山田錦 Photo by Y.Y.
精米機 Photo by Y.Y.
甑は湿らせて形を調整 Photo by Y.Y.
蔵元の白樫政孝さん Photo by Y.Y.
仕込み室 Photo by Y.Y.
圧搾機 Photo by Y.Y.
貯蔵室 Photo by Y.Y.
自社内の木工所。甑や暖気樽などを製造しています。
酒造道具の材料がストックされています。 Photo by Y.Y.
木工所。かい棒を製作中。 Photo by Y.Y.
暖気樽を製造中。 Photo by Y.Y.
木工所。木のストック Photo by Y.Y.
木工所。他の酒蔵から、木の酒造道具の受注をうける。 Photo by Y.Y.
木工所 Photo by Y.Y.
樽を締める藁縄も生産しています。 Photo by Y.Y.
こちらが、珍しい藁縄製造機 Photo by Y.Y.
世界でただひとつと思われる、極太の藁縄が編める貴重な藁縄製造機 Photo by Y.Y.
藁縄製造機 Photo by Y.Y.
灘五郷酒所 https://nadagogo.com/ Photo by Y.Y.
灘五郷酒所 Photo by Y.Y.
飲み比べセット Photo by Y.Y.
ユニクロ製剣菱Tシャツ姿の白樫さん Photo by Y.Y.
執筆 日本酒と食のジャーナリスト 山本洋子
※週刊ダイヤモンド2023年11月11日号より転載