新日本酒紀行 地域を醸すもの ラグーンブリュワリー
新潟県新潟市
オオヒシクイが飛ぶ福島潟の田んぼ Photo by Yohko Yamamoto
2つの製造免許で日本と世界へ!
持続可能を目指す小さな酒蔵
(本文)
日本有数の渡り鳥の飛来地、新潟市の福島潟(ふくしまがた)で、2021年11月に新しく酒蔵を立ち上げた田中洋介さん。「潟(ラグーン)の生態系のような、多様性のある酒を」と、ラグーンブリュワリーと命名。
清酒の製造免許は約50年間、新規で発行されず、清酒蔵を営むには既存の免許の譲受か蔵の買収しか道はなかった。21年、国の規制緩和で輸出用に限った清酒製造に新規参入許可が下り、田中さんは起業を決意。国内販売用に「その他の醸造酒」の製造免許との両輪で考えた。
実は田中さん、前職は新潟市の今代司酒造の社長。異業種から経営の立て直しに入り、ヒット商品を連発、10年で人気蔵に成長させた。だがゼロからの起業は苦労の連続だった。
酒蔵は、偶然見つけた、市が管轄する飲食店を改修。狭かったが、シアトルで見た清酒醸造所が最小限で造っていたのをモデルに考案。
杜氏は、別の蔵で杜氏を務めていた尾﨑雅博さんが退職予定と知り、仲間に誘った。22年4月、カフェを開店。試飲や買い物も楽しめる蔵になる。
環境保全型を目指し、原料は地元で自然栽培に取り組む農家から積極的に調達。中でも、色も味も世界唯一の、トマトとバジルを用いたどぶろく「翔空SAKEマルゲリータ」が大人気に。
「こんな小さな酒蔵が全国に広がれば、田んぼや畑が活性化して、酒の多様化も図れ、町おこしにもつながる」と田中さん。「町のパン屋さんみたいな酒蔵を増やしたい」と笑う。潟から日本、そして世界へ、小さくて強い蔵が答えを出す。
ラグーンブリュワリーの前は、四季折々が美しい福島潟
https://www.lagoon-brewery.com/ HPより
↑「翔空 SAKEマルゲリータ」
●ラグーンブリュワリー・新潟市北区前新田乙576-1
●代表銘柄:翔空 サンサンどぶろく、翔空 サンサン澄み酒
●杜氏:尾﨑雅博
●主要な米の品種:亀ノ尾、五百万石、越淡麗
ラグーンブリュワリー 田中洋介さん Photo by Yohko Yamamoto
福島潟 Photo by Yohko Yamamoto
麹室
麹室
麹室 Photo by LAGOON BREWERY
かい入れ Photo by Yohko Yamamoto
ラグーンブリュワリーのカフェ。ノンアルコールドリンクもいろいろあり
カフェ店内。オリジナルTシャツも販売。窓の外は福島潟 Photo by Yohko Yamamoto
店内の冷蔵庫。試飲もできます Photo by Yohko Yamamoto
ぜひ試してほしい!爽やかなカフェメニュー Photo by Yohko Yamamoto
トマトとバジル風味。温かなドリンクで Photo by Yohko Yamamoto
飲み比べセットもあります🌾 Photo by Yohko Yamamoto
「翔空 サンサン澄み酒」
「翔空 ほぼ麹ドブロク」
シンボルタンクと田中さん Photo by Yohko Yamamoto
日本酒と食のジャーナリスト 山本洋子
※週刊ダイヤモンド2023年4月8日号より転載