週刊ダイヤモンド 22年12月24日・31日新年合併特大号「総予測2023 新時代に突入! どうなる? 株価・円安・物価・企業業績」号の連載「新日本酒紀行 地域を醸すもの」では、石川県の吉田酒造店さんをご紹介しています。環境に負荷をかけない酒造りを目指し、2021年に電力の全てを再生可能エネルギーに転換!
廻船問屋の離れ家を移築した酒蔵 Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行 地域を醸すもの「手取川」
石川県白山市
『白山の自然と季節を表すモダン山廃で、
持続可能な酒造り』
霊峰白山に源流を発する手取川の扇状地は、川が暴れ洪水も度重なったが、豊かな水資源は米作りと酒造りを盛んにした。
この地で1870年に創業した吉田酒造店の代表銘柄はズバリ「手取川」だ。7代目の吉田泰之さんは、東京農業大学を卒業後、山形県の出羽桜酒造で修業し実家の蔵へ入った。
先代杜氏の山本輝幸さんを師に、地の酒造りを身に付け、杜氏に就任。創業151年目に、白山の自然と季節を表す酒「吉田蔵u」を立ち上げる。
米は石川県の開発品種の石川門と百万石乃白。酵母は金沢酵母で、蔵付き乳酸菌発酵による山廃造り。搾って即瓶詰めし、爽やかなガス感を残す。アルコール度数は13度と低く、柔らかで颯爽とした酸味があり、モダン山廃と名付けた。普段日本酒を飲まない層にもヒットする。
追求するのは味や見た目だけではない。農業を営み酒造りを行う泰之さんは、気候変動を年々肌で感じており、環境に負荷をかけない酒造りを目指し、2021年に電力の全てを再生可能エネルギーに転換。
「電気代は上がりましたが、さまざまな形で節電に取り組み、蔵人の連帯感も高まりました」。過度な冷蔵を必要としない高品質な酒質設計に励み、上槽した酒を最短距離で瓶詰めできるように改善。
農業の未来を見据え、14年に山島の郷酒米振興会を結成。農家との関係を強固にし、蔵でも酒米を育てる。白山手取川ジオパークの自然保護のため、酒の売り上げの一部を寄付するなど活動を広め、地域の未来を酒造りでつなぐ。
仕込み水は手取川の伏流水。中硬水でカルシウムが多め Photo by Y.Y.
蔵で栽培した稲穂 Photo by Y.Y.
吉田泰之さん Photo by Y.Y.
精米所 Photo by Y.Y.
精米所 Photo by Y.Y.
回転式自動洗米浸漬装置 Photo by Y.Y.
麹室 Photo by Y.Y.
麹室 Photo by Y.Y.
出麹室 Photo by Y.Y.