一段仕込み!? 去年、新潟県長岡市のカネセ商店の菊口靖啓さんに教えてもらった「醸す森」。いわゆる新潟を代表する淡麗辛口とは違うタイプ!心惹かれて2022年1月に訪問しました。
↑苗場酒造の正面玄関。屋根には大雪が☃️ 駐車場にはたえず水が流れて停めやすくなっています。お酒は蔵売店でも購入できます。有料試飲もあり!Photo by Yohko Yamamoto
週刊ダイヤモンド 2022年 2/12号
新日本酒紀行 地域を醸すもの「醸す森」
新潟県中魚沼郡津南町
『乾杯にも料理にも!
一段仕込み、生原酒、袋搾りの新感覚日本酒』
(本文より)
世界で唯一、三段仕込みで造る日本酒は、醸造酒でアルコール度数が20度にも上がる。
酒母に麹米と蒸し米と水を1日に1回ずつ、3回に分けて加えるのが三段仕込み。全体量を増やしつつ発酵を旺盛にする。500年以上昔に確立した技術だ。その伝統を変えた酒が、一段仕込みの「醸す森」だ。
豪雪地、新潟県の津南町の老舗蔵に後継者がなく、2013年に会社経営者の新保光栄さんへ引き継がれ、苗場酒造として再出発。「最高の酒を造ってみたい」と光栄さんは親戚の名杜氏、新保英博さんに4年間、蔵人への醸造指導を依頼し品質を高めた。
実家が松之山温泉の「酒の宿 玉城屋」で、「醸す森」というバル&ホステルを経営する山岸裕一さんはソムリエで利き酒師。宿で出す酒を求めて光栄さんに相談した。
「フルーティーで爽やか、甘味があって度数は低く、乾杯酒によく、また飲みたくなる酒。一段仕込み、生原酒、袋搾り」と明快で、光栄さんと意気投合し、宿の名を冠した酒造りを開始。
「造り方にとらわれず若い感性で」と製造責任者に若手の武田翔太さんを抜擢し、地元米を使って試行錯誤。少量仕込みで、香りと味を生かすため、もろみは袋に入れて槽で搾り、酒粕をたくさん出した。
生産量は減るが、手間暇かけて贅沢に醸した酒は原酒で14度、炭酸ガスをチリチリと含み、甘酸っぱく爽やかで評判を呼ぶ。
噂を聞いた取扱店が徐々に増え、今や全製造量の4割にも。
過去にとらわれない酒は、日本酒の可能性の扉を開けた。
『醸す森 Kamosu mori 純米吟醸 生酒』
●苗場酒造・新潟県中魚沼郡津南町下船渡戊555
●代表銘柄:醸す森 純米大吟醸 生酒、苗場山 純米吟醸、苗場山 純米、猫場山 純米吟醸
●製造責任者:武田翔太
●主要な米の品種:五百万石、こしいぶき
釜場 Photo by Y.Y.
蔵内 Photo by Y.Y.
定番「苗場山」は自動圧搾機で搾る Photo by Y.Y.
「醸す森」専用の冷蔵酒母室 Photo by Y.Y.
蒸し米 Photo:Naebasyuzo
放冷 Photo:Naebasyuzo
麹室 Photo by Y.Y.
麹米 Photo by Y.Y.
もろみ Photo:Naebasyuzo
「醸す森」の搾りは2台の槽で袋搾りに Photo by Y.Y.
「醸す森」の搾りは2台の槽で袋搾りに Photo:Naebasyuzo
「醸す森」の搾りは2台の槽で袋搾りに Photo by Y.Y.
「醸す森」の搾りは2台の槽で袋搾りに Photo by Y.Y.
【写真】蔵売店、「苗場山」純米吟醸・純米カップ、お茶などを合わせてアレンジする「醸す森」
蔵売店には自動試飲機を設置 Photo by Y.Y.
店内 Photo by Y.Y.
名入りの酒器 Photo by Y.Y.
「苗場山」純米吟醸 Photo by Y.Y.
「苗場山」純米カップ Photo by Y.Y.
「醸す森」の酒粕は甘酸っぱく柔らかい Photo by Y.Y.
「酒の宿 玉城屋」では「醸す森」にお茶などを合わせてアレンジ Photo by Y.Y.
(酒食ジャーナリスト 山本洋子)
※週刊ダイヤモンド2022年2月12日号より転載