週刊ダイヤモンド 2022年 2/5号は京都府宮津市で、無農薬栽培の田んぼから始まるお酢づくりに挑む、飯尾醸造の飯尾彰浩さんにお話を伺いました。
新製品は、お酢ならぬお酒!?
↑5代目の飯尾彰浩さん
↑風光明媚な地元丹後の棚田。田植えや稲刈り時には、飯尾醸造の愛用者が集まります。 Photo:Iiojozo
記事は週刊ダイヤモンド 2022年 2/5号より
『米酢の原料は酒!
棚田から始まる醸造蔵の新たな挑戦』
塩と並ぶ世界最古の調味料である酢は、酒を酢酸菌により発酵させ、エチルアルコールを酢酸に変える。ビネガー(vinegar)はワイン(vin)が酸っぱくなったものが語源だ。日本には4世紀ごろ、中国から製法が伝来した。
「江戸時代初期まで、酢は日本酒から造る米酢だけで、大変高価な調味料でした」と、飯尾醸造5代目の飯尾彰浩さん。その後、酒粕から粕酢を造る製法が確立され、庶民にも広まる。
飯尾醸造は、全国でも唯一、米を育て酒を醸して酢を造る醸造蔵。
米は丹後地域の山里の棚田で、蔵人と契約農家が農薬を使わずに麹米用の五百万石と掛米用のコシヒカリを栽培する。
酒を醸した後、酢蔵に運び、代々引き継ぐ酢酸菌の菌膜を酒の液面に浮かべると、酢酸発酵が始まる。静置発酵で約100日かけて米酢を造り、さらに300日ほど熟成させて出荷。
機械を使って1日でできる安価な酢と比べ、材料も時間も潤沢に使う。その味は芳醇なこくが特徴で、すし職人がこぞって愛用する逸品だ。
120年以上続く製法だが、数年前に税務署から酒税を請求された。
最終製品は米酢だが、製造過程で酒ができるという主張だ。その後、米酢製造用の酒に限っては非課税になったが、複雑な思いが募った。
長年の愛用者から「酢の原料の酒を飲んでみたい」と度々要望があり、この春、数量限定で「純米富士酒」の発売を決めた。もちろん酒税は納める。
米から酒を経て酢になる尊さ。棚田を守る醸造蔵の新たな挑戦が始まる。
『純米富士酒』
●飯尾醸造・京都府宮津市小田宿野373
●代表銘柄:純米富士酒、純米富士酢、富士酢プレミアム、富士手巻きすし酢、紅芋酢、しゃぶしゃぶに夢中
●杜氏:藤本真充
●主要な米の品種:五百万石、コシヒカリ
田植え Photo:Iiojozo
日本海が一望できる丹後の棚田。緑が眩しい! Photo:Iiojozo
そして、収穫時を迎える黄金色の棚田。 Photo:Iiojozo
稲刈りに集まった飯尾醸造のファン!手刈りです。 Photo:Iiojozo
刈り取った稲は🌾、はざ掛け天日干しに。 Photo:Iiojozo
麹造り。 Photo:Iiojozo
麹造りの「床もみ」作業 Photo:Iiojozo
出来上がった麹の「枯らし」作業。 Photo:Iiojozo
酒のもろみ Photo:Iiojozo
もろみへ、かいを入れる蔵人。 Photo:Iiojozo
こちらは、酢のもろみ! Photo:Iiojozo
酢酸菌の菌膜で酒が発酵して酢になります! Photo:Iiojozo
お酢のもろみタンク Photo by Yohko Yamamoto
お酢を搾る伝統的な木の槽
槽の中 Photo by Y.Y.
全国でも唯一でしょう!珍しい”人力”による槽の搾り機。搾りの作業中。四人がかりです。Photo:Iiojozo
槽の側板をテーブルに。洗練された蔵内。 Photo by Y.Y.
戦時中も、軍の御用達としてお酢の製造を継続。 Photo by Y.Y.
飯尾彰浩さんは「しゃぶしゃぶに夢中」をはじめ商品の企画センス抜群! Photo by Y.Y.
はちみつ入り紅芋酢 Photo:Iiojozo
富士手巻きすし酢 Photo:Iiojozo
純米富士酢 Photo:Iiojozo
※週刊ダイヤモンド2022年2月5日号より転載