『新日本酒紀行 地域を醸すもの 蓬莱』岐阜県飛騨市
著書『日本酒がワインを超える日』
↑国の登録有形文化財の蔵の前で、大定番の「家伝手造り」を手にする蔵元の渡邉久憲さん Photo:Watanabesyuzouten
『酒はエンターテインメント、
楽しさを武器に売上4倍!』
(本文より)
年商4億円が3割まで減少し、杜氏は病で引退、古参社員は退職と、歯止めがかからぬ業績不振から、世界一のコンテスト受賞数を達成し、売上を4倍に伸ばして、世界酒蔵ランキング2020で1位に輝いたのが、岐阜県飛騨市の渡辺酒造店だ。
創業は1870年、地元で手堅い商売を続けてきたが、2002年の酒類販売規制緩和により得意先の販売額が激減。既存店への忖度で、勃興してきたディスカウント店へ販売ができず苦境に陥る。
9代目の渡邉久憲さんは「このまま死ぬわけにはいかない」と、矢継ぎ早に施策を打ち出す。品質も重要だが売る技術が必要と悟り、お客さんが求めるものを知ろうとイベントを企画し、蔵見学に力を入れ、直接つながる機会を設けた。
客の声をヒントに商品開発した「ガリガリ氷原酒」や「蔵元の隠し酒」などヒット商品が誕生。情報発信のミニコミ紙「飛騨スポ」を配ると、一部の酒店では顰蹙を買うが、面白がる新規店も増え、「経営を加速するのはエンタメ化だ!」と自信を得る。
外国人を積極的に採用し、IWC(インターナショナルワインチャレンジ)他、様々な鑑評会で入賞し、ANAの機内酒に選ばれた。絶滅寸前の地元品種米を復活させ、新ブランド「W」を立ち上げると、売上12億円を達成!
今秋、本を出版し逆境からの再生ストーリーを公開。題名は『日本酒がワインを超える日』だ。「おいしいだけでは酒は売れない。興味を引く見せ方が重要」とエンタメ化経営を伝授。
目指すは日本酒のワンダーランドづくりだ。
↑ 蓬莱 純米吟醸 家伝手造り
●渡辺酒造店
●岐阜県飛騨市古川町壱之町7-7
●代表銘柄:蓬莱 純米大吟醸、W、蔵元の隠し酒、天才杜氏の入魂酒、飛騨のどぶ
●杜氏:北場広治
●主要な米の品種:ひだほまれ、山田錦、雄町、ひだみのり
洗米 Photo:Watanabesyuzouten
洗米 Photo:Watanabesyuzouten
麹室で種を振る Photo:Watanabesyuzouten
麹造り Photo:Watanabesyuzouten
生酛造りの酛すり Photo:Watanabesyuzouten
酒母造り Photo:Watanabesyuzouten
酒母造り Photo:Watanabesyuzouten
酒母造り Photo:Watanabesyuzouten
木桶仕込みの酒 Photo:Watanabesyuzouten
袋搾り Photo:Watanabesyuzouten
槽搾り Photo:Watanabesyuzouten
【写真】純米大吟醸規格の「W」の箱と瓶、著書、「家伝手造り」の裏ラベル
純米大吟醸規格の「W」の箱と瓶。Wは渡辺、ワールド、笑いから命名 Photo by Yohko Yamamoto
純米大吟醸規格の「W」の箱と瓶。Wは渡辺、ワールド、笑いから命名 Photo by Y.Y.
著書『日本酒がワインを超える日』 Photo by Y.Y.
「家伝手造り」の裏ラベル。英語と日本地図も記載 Photo by Y.Y. 拡大画像表示
※週刊ダイヤモンド2021年10月23日号より転載