週刊ダイヤモンド 2021年 9/11号では、東京都港区芝のビルで醸造を行う、コンパクトの極みというべき斬新な酒蔵を紹介しています!
新日本酒紀行 地域を醸すもの「江戸開城」224
杜氏の寺澤善実さん(左)と代表の齊藤俊一さん Photo by Yohko Yamamoto
『土地8坪に立つビルで極上を醸す!
東京港区芝のクラフト蔵』
コンパクトシティーを実現させる形の一つとして、「クラフト蔵に大きな可能性がある」と東京港醸造の杜氏の寺澤善実さん。
港区芝の総面積22坪の4階建てのビルで一年中、酒を醸す。
4階で米を蒸し、麹を造り、3階で蒸し米を冷やし、仕込みと上槽は2階、瓶詰めを1階で行う。
仕込み水は東京の水道水で、東京産の米と酵母を用いた酒や、SDGsを考慮した無洗米の酒の醸造にも挑む。
代表の齊藤俊一さんは、100年前に廃業した実家の酒造業を復活させるのが悲願だった。
2006年に寺澤さんが責任者を務める52平方メートルの台場醸造所を見て、この面積で酒ができるなら!と寺澤さんを口説いた。
「絶対儲からないからやめた方がよい」と言われたが、「財産をなくしてもいいからやりたい」と、齊藤さんは何度も交渉。
寺澤さんはその熱意と夢に共感した。
だが、肝心の酒造免許は税務署から門前払い。諦めず署へ日参し紆余曲折の末、11年に、どぶろくが醸せるその他の醸造酒とリキュールの製造免許を取得。16年に清酒の製造免許を取得し、「江戸開城」を発売。
宣伝のため角打ち用の車を誂えて祭に出店し、蔵の前でも営業。売店を設け、ネット販売も始めると、東京23区内唯一の酒蔵は徐々に人気が上昇。
さらに寺澤さんは大きな麹室が要らない超小型製麹装置を発明。
奇跡のようなクラフト蔵の成功に問い合わせも入る。寺澤さんはコンサル業務を行う新会社を設立。新たな蔵も立ち上がった。
小さな醸しが、大きな波となり全国へ。
↑ 「純米吟醸原酒 江戸開城 山田錦」
●東京港醸造・東京都港区芝4-7-10
●代表銘柄:純米吟醸原酒 江戸開城、同 All Tokyo、同 Sustainable Sake、純米どぶろく江戸開城
●杜氏:寺澤善実
●主要な米の品種:山田錦、雄町、愛山、キヌヒカリ
醸造所は4階建てのビル Photo by Y.Y.
寺澤さんが設計した小型甑 Photo by Y.Y.
寺澤さんが設計した小型甑 Photo by Y.Y.
寺澤さんが設計した小型甑 Photo by Y.Y.
蒸し米の放冷作業 Photo by Y.Y.
麹室 Photo by Y.Y.
麹米 Photo by Y.Y.
小さなタンクで週1本ずつ仕込む Photo by Y.Y.
三段仕込みの留め添え作業 Photo by Y.Y.
搾り機は冷房を利かせた2階で、使うたびに清掃 Photo by Y.Y.
醸造所向かいの売店 Photo by Y.Y.
醸造所向かいの売店 Photo by Y.Y.
東京産の米と酵母で醸した酒 Photo by Y.Y.
無洗米で醸したサステイナブルな酒 Photo by Y.Y.
オリジナルの醤油 Photo by Y.Y.
同じく味噌 Photo by Y.Y.
※週刊ダイヤモンド2021年9月11日号より転載