おだやかでまろやかなお酒、岐阜の「竹雀」さん
中でも生酛造りのお酒は、温めると抜群においしい。
お酒造りは家族4人でという小さな酒蔵で、「竹雀」というブランドを立ち上げたのは、大塚清一郎さん。奥さんの亜希子さんとの出会いは、剣道が縁。素敵な美男美女カップルです!
新日本酒紀行 地域を醸すもの
岐阜県揖斐郡池田町
「竹雀」TAKESUZUME
創業1884年。蔵前で清一郎さんと亜希子さん Photo by Yohko Yamamoto
『家族で醸す小さな蔵の
しなやかで力強い純米酒』
(本文より)
大塚酒造の6代目で杜氏の大塚清一郎さんは剣道5段の腕前で、竹刀を櫂棒に持ち替え、純米酒造りに精魂を込める。妻の亜希子さんは剣道3段、高校国体の試合で亜希子さんが一目ぼれし、結婚に至る。酒造りは夫婦と清一郎さんの両親だけという家内制手工の蔵だ。
清一郎さんは東京農業大学醸造科を卒業後、酒の味にほれ込んだ三重県の元坂酒造の門を叩き、2年間酒造りを学び、蔵に戻った。そして、2010年に立ち上げた銘柄が「竹雀」だ。
酒名は家紋の「竹に雀」からで、家紋は剣道の防具に入れ、常に一体だった。
「竹はしなやかで折れにくく強度もあります。雀は群がって繁栄し、縁起が良い。ただ、雀は米を食べてしまうのが難ですが(笑)」と清一郎さん。
全ての酒を800キログラム以下の小仕込みで丁寧に醸し、華やかな香りや甘さはない。芯があり飲み飽きせず、燗酒もうまいとあって飲食店から高評価を得、11年間で醸造量は3倍強に増えた。
中でも人気は、蔵近くの田んぼで契約農家の野網さん親子3人が育てた山田錦の酒。酵母無添加による伝統的な生酛造りで醸した無濾過の純米酒だ。
田んぼの水と仕込み水は近くを流れる粕川の伏流水で、土地の米と水だけで醸す。うま味や酸味が調和し、燗にするとさえ渡り熟成にも向く。郷土料理の朴葉味噌や肉料理にも寄り添う。
「土地の気候風土を酒として表現したい」と清一郎さん。
目標は全量を町内産の米で生酛造りすることだ。
(酒食ジャーナリスト 山本洋子)
竹雀 生酛純米酒
●大塚酒造・岐阜県揖斐郡池田町池野422
●代表銘柄:竹雀 純米、竹雀 純米 超辛口、竹雀 山廃純米酒、初霜 純米酒
●杜氏:大塚清一郎 ●主要な米の品種:山田錦、雄町、五百万石、ハツシモ
【写真】野網家の山田錦圃場の四季。仕込み水と同じ粕川の伏流水で育てる
野網家の山田錦圃場の四季。仕込み水と同じ粕川の伏流水で育てる Photo by Y.Y.
水量は豊富で、水枯れすることはない Photo by Y.Y.
野網家の山田錦圃場の四季。Photo:Otsukasyuzo
Photo:Otsukasyuzo
野網家の山田錦圃場の四季。収穫間近 Photo:Otsukasyuzo
鉄釜の上に設置した蒸気フードは清一郎さんお手製 Photo by Y.Y.
麹室の入り口 Photo by Y.Y.
出麹室も清一郎さんの手作り Photo by Y.Y.
出麹室 Photo:Otsukasyuzo
力を入れる生酛の酒。酛すり Photo:Otsukasyuzo
元気の良い酒母 Photo:Otsukasyuzo
明るい仕込み蔵 Photo by Y.Y.
酒は全量、槽で搾る Photo by Y.Y.
Photo:Otsukasyuzo
酒は全量槽で搾るが、ほぼ、清一郎さんひとりでこなす Photo:Otsukasyuzo
Photo:Otsukasyuzo
生酛の裏貼りには、米農家の野網家父の顔写真を入れている Photo by Y.Y. 拡大画像表示
うすにごり Photo by Y.Y.
うすにごりは息子さん(弟)の顔 Photo by Y.Y. 拡大画像表示
ハツシモで醸した県内限定酒「初霜」 Photo by Y.Y.
※週刊ダイヤモンド2021年7月10日号より転載
◉竹雀醸造元・大塚酒造さんのInstagram