週刊ダイヤモンド21年2月6日号
新日本酒紀行 地域を醸すもの 千代酒造「櫛羅」
奈良県御所市大字櫛羅
↑ 3代目で杜氏の堺哲也さん Photo by Yohko Yamamoto
『ワイン出身の3代目・杜氏が育てて醸す
櫛羅産山田錦の酒』
奈良盆地西南部に位置する御所市は、大和朝廷以前の歴史を誇る神話の里。役行者が修行したと伝わる霊山、葛城山の麓に立つ酒蔵が千代酒造だ。
葛城山の伏流水の恩恵を受け、天然の軟水で仕込む酒はきれいな味で後口の切れも抜群。
杜氏を務めるのは3代目の堺哲也さん。実は生まれも育ちも北海道。山梨県のワイナリーでワイン造りをしていたが、東京で開催された酒類研修会で、蔵元の娘と恋に落ち、28歳で結婚。ワインから、奈良の地で日本酒の道へ。
千代酒造は、最盛期には年間5000石も製造した大きな蔵で、ほとんど大手酒造会社に桶売りしていた。だが注文は徐々に減少し、哲也さんが蔵に入った1995年は3500石、2000年は1000石、05年に注文はとうとうゼロに。その間、高品質な純米酒も少量製造していたが、自社で全量を販売するに当たり、哲也さんが重視したのは原料米だ。
ワインがブドウに力を入れるように、米作りから自ら行うと決め、酒蔵の周りで山田錦を育て始めた。酒質を上げるには、米質を上げることが必要だと、農薬や化学肥料に頼らない農法を選んだ。
「窒素分を減らし、収量を減らして育てた米は、酒の味がきれいです」と哲也さん。
銘柄は、蔵と田んぼの地名の「櫛羅」と命名。その後、葛城山の別名「篠峯」ブランドも立ち上げ、こちらは様々な米の品種で醸す。
毎年、酒造の条件を変え、ベストを模索し、米作りと酒造りの頂上を目指す。
↑ 櫛羅 純米 山田錦
●千代酒造・奈良県御所市大字櫛羅621 ●代表銘柄:櫛羅 純米吟醸、篠峯、篠峯田圃ラベル、篠峯ろくまる● 杜氏:堺 哲也 ●主要な米の品種:山田錦、亀ノ尾、雄町、愛山、伊勢錦
蔵は葛城山麓の高台に立つ Photo by Y.Y.
米と精米機は2階に Photo by Y.Y.
自社田の山田錦 Photo by Y.Y.
麹米と精米歩合50%以上の米はレーベントクラフトパックに入れてラップ Photo by Y.Y.
麹米と精米歩合50%以上の米はレーベントクラフトパックに入れてラップ Photo by Y.Y.
全量自家精米 Photo by Y.Y.
計量器付バッチ式洗米機と、連続式洗米機で洗い分ける Photo by Y.Y.
計量器付バッチ式洗米機と、連続式洗米機で洗い分ける Photo by Y.Y.
こしき Photo by Y.Y.
洗米後 Photo by Y.Y.
2016年に改築した麹室は4室 Photo by Y.Y.
2016年に改築した麹室は4室 Photo by Y.Y.
麹室は4室 Photo by Y.Y.
麹室は4室 Photo by Y.Y.
出麹 Photo by Y.Y.
出麹 Photo by Y.Y.
仕込み蔵ともろみ Photo by Y.Y.
仕込み蔵ともろみ Photo by Y.Y.
搾り機 Photo by Y.Y.
「櫛羅 純米」の瓶の裏面 Photo by Y.Y.
(酒食ジャーナリスト 山本洋子)
週刊ダイヤモンド21年2月6日号