ご近所の諏訪部さんが「私が手伝った田んぼのお米!」と分けてくれた会津美里町の無農薬栽培の玄米。ピカピカのつやつやでうまみが多く、会津美里町の米に興味津々になりました。
そんなときに、白井酒造店の9代目・白井栄一さん醸す、”会津産有機栽培の五百万石のみで醸す” 山廃仕込みの生の酒「風が吹く」に出会ったのです。
田んぼと蔵を見せてもらいました!
新日本酒紀行「風が吹く」
福島県大沼郡会津美里町
『会津産有機栽培五百万石のみで醸す
山廃仕込みの生の酒』
↑ 9代目の白井栄一さん Photo by Yohko Yamamoto
「風通しが良いと稲は病気に強く、何事にも縁起が良い。追い風だともっと良い(笑)」と白井酒造店の9代目の白井栄一さん。
蔵が立つ会津美里町は会津盆地の南端、優良米の産地で豪雪地帯だ。山間部で昼夜の寒暖差があり、日照時間は長く、雪解けのきれいな水が豊富。近くには博士山を源とする宮川が流れる。農家は研究熱心な人が多い。
栄一さんは、1994年に福島大学を卒業し実家の酒蔵に就職。だが、その直後に父が逝去してしまう。
当時は地元用の酒「萬代芳」が主で、年々売り上げが減少。酒に特徴を出すには地元産の酒米だと閃き、農家を探すが見つからない。思い悩んでいるときに、有機栽培農家の児島徳夫さんと知り合う。
児島さんは元英語教師で環境運動から農業の道へ進み、仲間たちと農業法人を運営。昔の『会津農書』に基づく循環農業を世界農業遺産に登録しようとしていた。そんな児島さんと意気投合し、酒米栽培を快諾してもらう。
農薬や化学肥料に頼らない米作りと同様に、酒造りも余計な添加物は使わないと決め、山廃仕込みに挑戦した。
そうしてできた酒が、地元会津産の有機栽培五百万石で醸す生酒「風が吹く」だ。
季節によってラベルの色を替えて、2005年に販売すると口コミで徐々に広がり、15年以上たった今、全量の7割を占める主力商品に成長した。
児島さんは若手農業塾も開催し、栄一さんは夏に農業を学ぶ若者たちに、冬は酒造りの場を提供。
米から続く酒造りが土地の未来をつなぐと信じて。
白井家の有機栽培五百万石の田んぼ。仕込み水となる伏流水の源、会津明神ヶ岳を背景に Photo by Y.Y.
風が吹く 山廃仕込 純米吟醸生酒 中取り
●白井酒造店・福島県大沼郡会津美里町永井野中町1862●代表銘柄:風が吹く 純米大吟醸生原酒、同 山廃仕込純米吟醸、同 山廃仕込純米 中取り●杜氏:白井栄一●主要な米の品種:五百万石
創業当時からあると伝わる大ケヤキ Photo by Y.Y.
近くを流れる1級河川、宮川の小さな支流が蔵の敷地内を流れる Photo by Y.Y.
蒸し米は重油バーナーで沸かした蒸気を使う Photo by Y.Y.
サーマルタンク Photo by Y.Y.
サーマルタンク Photo by Y.Y.
全量を槽で搾る Photo by Y.Y.
全量を槽で搾る Photo by Y.Y.
酒はマイナス5度以下の冷蔵庫で保管 Photo by Y.Y.
瓶の裏面 有機農畜産物加工酒類 Photo by Y.Y.
(酒食ジャーナリスト 山本洋子)
※週刊ダイヤモンド2021年1月23日号より転載