週刊ダイヤモンドの連載『新日本酒紀行 地域を醸すもの』
2021年 1/16号
福岡県三井郡大刀洗町「三井の寿」を紹介
1983年から、純米酒にシフトした酒蔵です。
↑米どころの筑後平野で1922年に創業。蔵は小石原川に面して立つ。
モットーは「米の持ち味を醸し出す酒造り」Photo by Yohko Yamamoto
『米も味わいもバラエティ豊かな
99%純米酒蔵』
(本文)
日本酒のラベルといえば漢字が当たり前だった2006年、楽しいイラストの季節限定酒が登場した。春は四つ葉のクローバー、夏はセミ、秋はポルチーニ茸で、それぞれイタリア語が添えてある。
企画したのは福岡県三井郡のみいの寿蔵元杜氏の井上宰継さんだ。
業界に新風を吹き込み、イタリアンラベルと呼ばれて15年たつ。
↑奥の光る瓦屋根が酒蔵。絵になる1本道!
1983年、蔵は純米酒にシフトした。
「福岡市とフランスのボルドー市が姉妹都市になり、父が渡仏。
ワインの五大シャトーを見て回り、“本物の日本酒を造れば小さな蔵でも売れる”と確信したのです」。
大量生産型の機械設備を捨て、純米酒造りに専念。
↑三井の寿のモットーは「米の持ち味を醸し出す酒造り」
その後、宰継さんが杜氏になり、全ての酒が大吟醸や純米などの特定名称酒になった。
↑4代目で杜氏を務める井上宰継さん(左)と蔵人で弟の康二郎さん
しかも99%を純米酒が占め、残りの1%は清酒鑑評会用の大吟醸のみという潔さだ。
米力を強化し、農家と連携。山田錦は福岡県糸島産、熊本県の無農薬栽培米を確保する。その他に、八女産の吟のさとや地元の夢一献、県外産の雄町や酒未来。さらに、80年前の米で12粒から復活栽培した穀良都もとバラエティに富む。
酒はフレッシュなタイプからフルボディタイプまで、宰継さんは器用にこなす。
「食べることが大好き! さまざまな人に季節や場面に合わせた酒を提案したい。一番人気の『+14 大辛口』は米のうま味が際立つ辛口で、実はラベルが表と裏で違うダブルA面仕様。したいことがいっぱいで(笑)、守備範囲の広さと友達の多さが自慢です!」
↑三井の寿 +14 大辛口 純米吟醸
●みいの寿・福岡県三井郡大刀洗町大字栄田1067-2 ●代表銘柄:三井の寿 純米大吟醸、三井の寿 純米吟醸、辛釀美田山廃純米 ●杜氏:井上宰継 ●主要な米の品種:山田錦、吟のさと、夢一献、雄町、酒未来
↑蔵に置かれた蒸し機
↑麹室にて。麹をチェックする宰継さん
↑麹室の入り口。歴史ある木の扉。壁は煉瓦
↑美しく、輝くような麹
↑仕込み蔵
↑搾り機の薮田式ろ過圧搾機
↑搾り機は清潔を徹底
↑布類も真っ白、清潔をキープ
↑お酒の火入れ風景。お酒を瓶に詰めて、湯煎で丁寧に火入れ殺菌する
(酒食ジャーナリスト 山本洋子)
※週刊ダイヤモンド2021年1月16日号より転載
https://www.diamond.co.jp/magazine/20243011621.html