↑日本酒杜氏の清水紘一郎さん(右)と焼酎杜氏の弟の大介さん(左)
週刊ダイヤモンド2020年11月14日号
新日本酒紀行 地域を醸すもの NO.184
山梨県北杜市高根町
「青煌」
『4石から100石へ。
価値ある酒を定番に』
↑標高683m、八ヶ岳の麓に立つ酒蔵
https://diamond.jp/articles/-/255015
環境省選定の日本名水百選の一つ、八ヶ岳の「三分一湧水」は、戦国時代に水の利権で争う三つの村に、武田信玄が堰を築いて等配分したのが名の由来。この水で酒を造るのが武の井酒造だ。
「ミネラルが多い中硬水で、酵母発酵が旺盛になります」と杜氏の清水紘一郎さん。
1865年、初代の清水武左衛門がこの湧水の井戸に惚れて創業。標高683m、冬は八ヶ岳おろしがあり、外気温はマイナス10℃以下、蔵内は零下になる酒造りに適した土地だ。
紘一郎さんは東京農業大学で醸造を学び、茨城県の来福酒造で修業後、蔵に入った。会長は叔父、副会長は父、社長はいとこ。紘一郎さんは専務で日本酒の杜氏を、弟の大介さんは常務で米焼酎の杜氏を務める。
人気が低迷する日本酒の中でも、需要が激減しているのが普通酒だ。だが、吟醸酒や純米酒などの特定名称酒は微増。
15年前、当時の蔵は普通酒しか造っておらず、このままでは先がないと、紘一郎さんは特定名称酒の醸造を会長に進言した。すると「醸造から販売まで一人でやるなら」と許可を得た。
↑ラベル貼りまでひとりでこなす紘一郎さん。スピーディにこなせるよう、工夫がいっぱい!
↑紘一郎さんが立ち上げたブランド「青煌」酒造好適米の雄町(右)と美山錦(左)
酵母と米を厳選し、洗米から麹造り、仕込みに搾り、ラベル貼りや販路開拓までこなし、水の青さときらめく酒をイメージして「青煌」と命名。2007年に4石(一升瓶400本)で始め、地道に増やして今では25倍の100石に。
今年、地域の定番酒を目指し、近所の農家が育んだ酒米のひとごこちで純米酒を醸し、「武の井」の名で新発売。創業155年目にして、改めて地の酒を問う。
2020年に新発売した、地元農家の米で醸した純米酒「武の井」
◉青煌 純米吟醸 雄町 ↓
●武の井酒造・山梨県北杜市高根町箕輪1450●代表銘柄:青煌 純米大吟醸 愛山、青煌 特別純米 五百万石、青煌 純米 美山錦●杜氏:清水紘一郎●主要な米の品種:愛山、雄町、五百万石、美山錦、ひとごこち
※週刊ダイヤモンド2020年11月14日号より転載
ダイヤモンドオンライン
https://diamond.jp/articles/-/255015