新日本酒紀行 地域を醸すもの

週刊ダイヤモンド 新日本酒紀行 地域を醸すもの・天明 NO.174

週刊ダイヤモンドの連載「新日本酒紀行 地域を醸すもの」が、2週間後にダイヤモンドオンラインで全文を読めるようになりました。

福島県河沼郡会津坂下町

天明 TENMEI

『透明感のある美酒を極め、

この地で永遠に残る酒を目指す』  

↑仕込み蔵

(本文より)

 米どころ会津坂下町の酒蔵、天明醸造元曙酒造の鈴木孝市さんは27歳で杜氏を継ぎ、9年間で生産量を400石から1200石に増やした。

↑蔵元杜氏の鈴木孝市さん

【写真】「酒造りのこだわり」はこちら!

  前杜氏は両親だ。

 孝市さんの母、明美さんが杜氏制度を廃止し、1997年から杜氏となり酒造りに奮闘。だが2005年に大病を患い、その後、父の孝教さんが引き継ぐが体調を崩し、07年に孝市さんが蔵に入った。

 母に酒造りについて尋ねると、「命を削って習得した技術を教えられない」とピシャリ。  

 一つだけもらったヒントが「酒を飲むこと」。  

 何千種もの利き酒をし、美酒があれば蔵見学を申し込み、全国を回った。

 11年の東日本大震災では造り蔵3棟が全半壊。

 大量の商品が壊れた。  

 避難も視野に入れたが、この地で生まれた意味、酒を造る意義を問い、「ここで酒を造り続ける」と決意。  

 同年の冬から杜氏になり、酒質改革を蔵人に宣言すると大半が去った。そこで、いとこと若手2人を誘い、新しい酒造りをスタート。  

   日本酒だけでは資金繰りが苦しく、経営拡大は難しいと考え、町内の会津中央乳業が作る飲むヨーグルトと純米酒を調合して商品化。

 それが大ヒットすると利益を設備投資に充て、製麹機を新調するなど酒の改善を続けた。  

   透明感のある清らかなうま味、甘味、酸味のバランスが整い、評価も上がって製造量がUP。

 原料米は会津産が中心で、副原料の果実も地元産を使う。

 酒造工程はデータ化し、手順の標準化を進め、再現性を高めて美酒を極める。

 この地で永遠に残る酒を目指して。

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酒蔵の様子

麹室

杜氏の鈴木孝市さん考案の箱麹 Photo:Akebonosyuzou

   

槽場は断熱材で囲い氷点下に↑↓

 

会津坂下町の契約栽培田

サーマルタンク

搾り機は冷蔵室に

袋つりで搾る純米大吟醸 Photo:Akebonosyuzou

東北清酒鑑評会で評価員特別賞を受賞 Photo:Akebonosyuzou

「梅酒」に使う福島県産の高田梅 Photo:Akebonosyuzou

↑「スノードロップ」に使う北会津町みのり果樹園のブルーベリー
Photo:Akebonosyuzou

飲んで欲しい!1本

『天明 槽しぼり 純米火入』

↑「天明 槽しぼり 純米火入」の裏ラベル

【DATA】
曙酒造・福島県河沼郡会津坂下町戊亥乙2 ●代表銘柄:天明 純米大吟醸 夢の香40、天明 槽しぼり 純米吟醸、一生青春 大吟醸、スノードロップ ●杜氏:鈴木孝市 ●主要な米の品種:夢の香、山田錦、瑞穂黄金

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◉追記

昨秋〜2020年は孝市さんの成果がたくさん表れた年になりました。

令和元年東北清酒鑑評会優等賞受賞酒一覧表
令和元年
116日  仙台国税局鑑定官室

福島県・令和元酒造年度全国新酒鑑評会 入賞酒

そして、福島県秋季鑑評会純米部門知事賞を受賞★

しかも、会津坂下産の山田錦を使用した「火入閏号」!

Facebookより↓

『孝教さん明美さん以来の純米知事賞。ちゃんと紡げている実感と醸造王国ふくしまにいれる環境に、そしてともに張り合える仲間に喜びを感じる夜。素敵なポロシャツの孝教さん』

↑父で前杜氏の鈴木孝教さん

写真と文(オレンジ色部分)は曙酒造fbより引用

そして、スペイン・カサレスで行われた国際ワインコンクール Premios CINVE’2020 Awards SAKEでは『天明 掌玉 TENMEI SHOUGYOKU』がGran CINVE/Grand CINVE 2020SAKE部門の最高賞を受賞されたそうです。おめでとうございます!

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週刊ダイヤモンド20年9月5日号